(原題:THE VISIT )内容云々よりも、どうしてこの監督(M・ナイト・シャマラン)が十数年間にも渡ってハリウッドの第一線で仕事が出来るのか、そっちの方が興味がある。よほど強力なコネでも持っているのか。あるいはお偉い連中の何か“弱み”でも握っているのか。そういう裏の事情の存在を疑わないと、到底承伏出来るようなものではない。
母親がバカンスに出掛けている間に、休暇を利用して祖父母のいるペンシルバニア州の田舎町メイソンビルへと赴いたベッカとタイラーの中学生の姉弟。実は母親は家を出て一度も帰省しておらず、もちろんこの二人も祖父母とは初対面だ。祖父は優しく、祖母は料理上手で、姉弟にとって楽しい一週間になるはずだった。しかし、なぜか“夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと”を約束させられてしまう。そうは言っても、禁じられると実行したくなるのが人情。2人が絶対に開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまうと、そこで異様な光景を目撃する。
主人公の姉弟がビデオカメラを持参していて、自分たちの映像作品を作成するという設定になっている。要するにPOV形式のホラー編だ。一時期さんざん流行って今では手垢にまみれた感のある手法を、今ごろ得意満面で採用していること自体がまず痛々しい。
祖父母はどうやら認知症気味で、その常軌を逸した行動をカメラは映し出すのだが、いくらアブナい言動を見せつけられてもベッカとタイラーは家から逃げ出さないばかりか警察にも駆け込まないし、近所の大人に助けを求めることもしない。愚直なまでに“一週間の滞在”という当初の予定を守っている。
ベッカには鏡恐怖症があり、タイラーは度を超した潔癖症なのだが、それがドラマに上手く絡んでこないという芸の無さ。相手が体力で劣る年寄りなのだから、いくらこちらが中学生とはいえ、マトモにやり合えば負ける気はしないのだが、その機会を与えられても実行しないというのだから呆れる。
ホラー演出もすべて空振りで、ちっとも怖くない。この監督は“観客を本当に怖がらせること”と、“(大きな音を立てたりして)驚かすこと”との見分けがつかないらしい。だいたい、子供達を15年間も音信不通だった祖父母に軽い気持ちで預けるという母親の愚かさには脱力する。まずは自分が両親に会って話を付ける方が先だろう。そんな体たらくだからダンナに逃げられるのだ・・・・と文句の一つも言いたくなる。
キャスリン・ハーンやディアナ・デュナガン、ピーター・マクロビー、オリビア・デヨングとかいったキャストも馴染みがなく、それ以前に大して魅力も無い。それにしても、エンドクレジットで披露されるタイラーのラップには失笑した。結局この騒動は何だったのだろうか(爆)。シャマラン監督はもう映画を撮らないでよろしい。