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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「新宿純愛物語」

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 87年東映作品。これを観た時は、後世にカルト映画として語り継がれるかもしれないと思ったものだ。決して出来の良い映画ではない。それどころかドラマツルギーもへったくれもない無茶苦茶な作りで、監督もキャストもヤケクソになったとしか思えない惨状だ。しかしながら、何とも言えない高揚感と吸引力がある。こんな企画が罷り通ったのも、80年代という時代性を感じさせる。

 17歳のマリは友人のユミと一緒に学校をサボって、新宿のペット美容室に愛猫チャコを連れて行く。そこでマリは文麿というヤバそうな若造と知り合う。3人で食事をしようとレストランに入るが、マリは財布を紛失。すると文麿はレストランの支配人に殴る蹴るの暴行をはたらき、そのままマリを連れて逃走する。



 その途中で刑事二人組と遭遇するが、マリにちょっかいを出そうとした刑事をシバしいてしまい、警察に追われる身になる。資金を調達するために入ったサラ金は暴力団経営のヤミ金融で、そこで文麿と組員達との大立ち回りが勃発。こうしてヤクザにも追われるようになった文麿だが、なぜか拳銃とナイフを手にすることが出来、刺客集団を蹴散らしながらマリとの逃避行を続ける。

 レストランでのトラブルから、アッという間に騒ぎが幾何級数的に大きくなり、ついには新宿を舞台に大掛かりな“市街戦”が展開する。ストーリー運びに何の合理的な説明も無く、やたら暴力を振るう主人公は中身がカラッポで、ヤクザも警察も立場を考えずに暴れ回るばかり。何かの冗談ではないかと思うほどの非日常的な出来事の連続は、しかし全てを放り投げてしまったようなカタルシスがある。人を食ったラストも(良い意味での)脱力感が横溢している。こんな映画もあっていいのではないか。

 那須博之の演出は何か悪いクスリでもやっていたのではないかと心配するほど、過度の“前のめり”に徹している(笑)。主演の仲村トオルも引きつった顔で有り得ない場面展開をこなしており、五十嵐いづみや松井哲也、大地康雄、安岡力也、阿藤快、江夏豊といった意味も無く多彩なキャストが場を盛り上げる。ヒロイン役の一条寺美奈は凄く可愛いが、このあとすぐに引退してしまったのが残念だ。

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