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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アウトロー」

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 (原題:JACK REACHER)何とも雑なシャシンで、評価できない。これはやはりトム・クルーズが仕切り役を買って出た“俺様映画”であるからだろう。周りの意見も聞かず、ひたすら“ヒーローを演じている俺ってカッコいいだろ”という思い込みで、ゴリ押し的に作ってしまったという印象しか受けない(爆)。

 ピッツバーグで白昼無差別殺人事件が起きる。発射された銃弾は6発で、5人の犠牲者が出てしまった。現場に残された証拠から捜査当局は中東に従軍していた元スナイパーの男を逮捕するが、彼はジャック・リーチャーなる男を呼べと要求するだけで、あとは黙秘を決め込む。リーチャーは軍の捜査官だったが、今は除隊して定職にも就かない一介のアウトローらしい。容疑者が護送中に暴行を受けて昏倒した際に、なぜかリーチャー本人がひょっこりと現れ、身の潔白を主張する。彼は検事の娘である弁護士と協力して捜査に乗り出すが、やがて思いがけない事実が持ち上がってくる・・・・という筋書きだ。原作はリー・チャイルドによるベストセラー。

 意外なことに、このリーチャーという男、考えるより先に行動するハードボイルドなキャラクターなのかと思っていたら、まずは推理力で事に当たろうという姿勢が窺える。トム君にすれば“ただ腕っ節が強いだけの奴じゃないぜ”と言いたいところだが、そんな彼が突き止める“真相”とやらは、かなりいい加減なものだ。

 この事件の裏には企業買収にからむ陰謀があるらしいのだが、当初の銃撃事件はまだしも、それからの敵方の遣り口には釈然としないものが残る。やっていることが大雑把で、すぐに足が付くような所業が目立つ。まあこれは、トム君の推理力に合わせたようなプロットの積み上げ方なのだろうが、観ている側としては鼻白むばかりだ。

 それに、捜査当局に裏切り者がいるような設定に持って行くのはいいが、どうして内通しているのか、その背景が最後まで説明されないのには参った。アクションシーンは大味で、キレもコクもない。さらにはクライマックスになぜか銃器を置いての肉弾戦が展開されるのには失笑した(「エクスペンダブル2」じゃあるまいし ^^;)。

 クリストファー・マッカリーの演出は、単に“脚本通りやりました”という感じで特筆できるようなものはない。ロザムンド・パイクやロバート・デュバルといった脇の面子も精彩を欠く。悪の親玉に何とヴェルナー・ヘルツォーク監督が扮しているのだが、凄んでいるわりにはまったく迫力が無く、何しに出てきたのかも分からない。

 とにかく、トム君だけが自己満足に浸っているという印象しか受けない映画であり、観る価値はあまりない。この調子でシリーズ化するなんてことは、頼むからやめていただきたいものだ。

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