(原題:Into the Storm)見せ物に徹する潔さが良い。とはいえ、ストーリーには過度に御都合主義的な部分は見当たらず、演出は若干のケレン味を織り交ぜつつもテンポは良好で、ちゃんと1時間半の尺に収めているなど、作り手の的確な仕事ぶりが目立っている。娯楽映画はかくありたい。
アメリカ中西部シルバートンの町は、全米屈指の竜巻多発地帯だ。スペクタキュラーな映像を録って一攫千金を狙う“ストーム・チェイサー”であるタイタス・チームは、竜巻を追ってこの地にやってくる。一方、地元の高校生であるドニーとトレイの兄弟は、高校の教頭をしている父親との折り合いが悪い。二人は卒業式の記録映像を任せられるが、ドニーは仕事を放り出して女友達とデート。そんな時、大きな竜巻が街を襲い、高校を直撃する。
生徒や教員、父兄達は屋内に避難して事なきを得るが、今度は超弩級の竜巻が近付いてくる。教頭らはタイタス・チームと合流して事態の収拾に当たるが、その頃ドニー達は竜巻で壊された廃工場に閉じ込められていた。果たして、彼らの運命は・・・・という筋書きだ。
プロットは単純明快。捻りは無いが、その分ストレートに楽しめる。作劇のアクセントになっているのが、手持ちカメラやケータイを使ったPOV(主観)ショットの多用である。登場人物を要領よく紹介するのに役に立っているし、何よりそのミニマムな映像とディザスター・ムービーならではのスペクタクル場面とが鮮烈な対比効果をもたらす。
竜巻の災禍を描いた映画としてはヤン・デ・ボン監督の「ツイスター」(96年)を思い出すが、あれから十数年経って特殊効果も進歩を遂げ、本作ではまさに目を剥くような映像世界のオンパレードだ。地上にあるものをすべて吹き上げて破壊してゆくパワーの前では、たとえ頑丈な建物の中に入ろうと地下室に避難しようと無駄だ。家も車も駐機中の大型旅客機も粉々にされてしまう。特に“火炎竜巻”と化して人間を襲ったり、はるか上空に展開される驚愕の場面など、アイデアに満ちた映像の提示には感心するばかり。
監督スティーブン・クォーレの仕事は初めて見るが、ソツなく仕上げていて好感が持てる。リチャード・アーミテージをはじめサラ・ウェイン・キャリーズ、マット・ウォルシュ、アリシア・デブナム・ケアリーとキャストは馴染みの無い面々を揃えているが、これは俳優のギャラを低く抑えて浮いた分をSFXに注ぎ込もうという作戦だろう(笑)。それでも大根演技で足を引っ張っている奴が一人もいないのは有り難い。
最近のこの手の映画では珍しく、3D仕様ではないのもポイントが高いと思う。通常の2Dでもこれだけ迫力を出せれば上出来だろう。