71年イタリア生まれのピアニスト、ロベルト・オルサーを中心としたトリオによる新作「ステッピン・アウト」は、実に美しいアルバムだ。ジャズのカテゴリーに入るサウンドなのだが、しっかりとしたクラシックの素養を感じさせ、格調の高い音世界を展開させている。
収録曲の大半がオルサー自身のオリジナルだが、メロディやハーモニーは磨き上げられたようにクォリティが高い。それでいて難解さや高踏的な部分は捨象されており、誰が聴いてもスンナリと入っていける間口の広さをも併せ持っている。またポリスの「マジック」をカバーしているあたり、ポップな一面もある。ユーリ・ゴロウベフ(ベース)とマウロ・ベッジオ(ドラムス)によるリズム・セクションも強力だ。
そしてこのアルバムは音質が良い。2013年のジャズオーディオ・ディスク大賞にも選ばれているが、音場の清澄感は素晴らしいものがある。低域・高域とも気持ちよく伸びており、音像のクリアネスは比類が無い。まるでリスニングルームの空気が変わっていくようだ。オーディオ機器のチェック用にも十分使える逸品である。
イギリス南東部のエセックス出身のインディーバンド、ザ・ホラーズの4枚目のアルバム「ルミナス」は、ロック系では最近私が一番よく聴いているディスクである。正直、このグループのサウンドはこれまでダークなスノッブ臭が鼻について好きになれなかった。だがこの新譜はとても聴きやすい。とにかくダンサブルだ。
とはいえ、打ち込み主体の脳天気なダンス・ミュージックに仕上げられているわけではない。シューゲイザー系らしい深々としたディストーションを多用し、ノイジーでサイケデリックな印象である。だが、不必要な暗さや取っつきにくさは見当たらず、メロディラインは平易で明朗だ。しかも曲調はスケール感がある。
ファーストアルバムや2枚目のアルバムを好むリスナーからは敬遠される音作りかもしれないが、広範囲な支持を集めるような路線変更は決して間違ってはいないだろう。スタイルを躊躇なく変えるあたり、プライマル・スクリームとよく比較されるらしいが、今回のザ・ホラーズのやり方は地に足が付いたものであり、軽佻浮薄さとは無縁。ブリティッシュ・ロック好きならば要チェックの一枚である。
今年(2014年)惜しくもこの世を去った名指揮者のクラウディオ・アバドだが、キャリアが長い分、遺したレコーディングも数多い。もちろん私も彼のディスクは何枚も持っているのだが、今回買ったのは96年に吹き込まれたヴェルディの序曲・前奏曲集である。オーケストラはベルリン・フィルだ。
やはり地元イタリアの作曲家、しかもオペラ物をやらせると、この指揮者は抜群にうまい。まさに手が付けられないほどだ。スコアを精査して全ての音を網羅しようとする緻密さがありながら、演奏自体は流麗で明るく、しかもエネルギッシュ。歌心溢れる旋律の組み立て方や、ノリの良さは飽きることが無い。
録音はこのレーベル(独グラモフォン)にしてはイイ線行っており、各音像がボケずに艶やかに拾われている。音場感も悪くない。ヴェルディの序曲・前奏曲集といえば2枚組のカラヤン盤も有名だが、オイシイところをコンパクトに一枚にまとめ、しかもエンタテインメント性豊かに楽みたいのならば、やはりこのアバド盤に指を折りたい。
収録曲の大半がオルサー自身のオリジナルだが、メロディやハーモニーは磨き上げられたようにクォリティが高い。それでいて難解さや高踏的な部分は捨象されており、誰が聴いてもスンナリと入っていける間口の広さをも併せ持っている。またポリスの「マジック」をカバーしているあたり、ポップな一面もある。ユーリ・ゴロウベフ(ベース)とマウロ・ベッジオ(ドラムス)によるリズム・セクションも強力だ。
そしてこのアルバムは音質が良い。2013年のジャズオーディオ・ディスク大賞にも選ばれているが、音場の清澄感は素晴らしいものがある。低域・高域とも気持ちよく伸びており、音像のクリアネスは比類が無い。まるでリスニングルームの空気が変わっていくようだ。オーディオ機器のチェック用にも十分使える逸品である。
イギリス南東部のエセックス出身のインディーバンド、ザ・ホラーズの4枚目のアルバム「ルミナス」は、ロック系では最近私が一番よく聴いているディスクである。正直、このグループのサウンドはこれまでダークなスノッブ臭が鼻について好きになれなかった。だがこの新譜はとても聴きやすい。とにかくダンサブルだ。
とはいえ、打ち込み主体の脳天気なダンス・ミュージックに仕上げられているわけではない。シューゲイザー系らしい深々としたディストーションを多用し、ノイジーでサイケデリックな印象である。だが、不必要な暗さや取っつきにくさは見当たらず、メロディラインは平易で明朗だ。しかも曲調はスケール感がある。
ファーストアルバムや2枚目のアルバムを好むリスナーからは敬遠される音作りかもしれないが、広範囲な支持を集めるような路線変更は決して間違ってはいないだろう。スタイルを躊躇なく変えるあたり、プライマル・スクリームとよく比較されるらしいが、今回のザ・ホラーズのやり方は地に足が付いたものであり、軽佻浮薄さとは無縁。ブリティッシュ・ロック好きならば要チェックの一枚である。
今年(2014年)惜しくもこの世を去った名指揮者のクラウディオ・アバドだが、キャリアが長い分、遺したレコーディングも数多い。もちろん私も彼のディスクは何枚も持っているのだが、今回買ったのは96年に吹き込まれたヴェルディの序曲・前奏曲集である。オーケストラはベルリン・フィルだ。
やはり地元イタリアの作曲家、しかもオペラ物をやらせると、この指揮者は抜群にうまい。まさに手が付けられないほどだ。スコアを精査して全ての音を網羅しようとする緻密さがありながら、演奏自体は流麗で明るく、しかもエネルギッシュ。歌心溢れる旋律の組み立て方や、ノリの良さは飽きることが無い。
録音はこのレーベル(独グラモフォン)にしてはイイ線行っており、各音像がボケずに艶やかに拾われている。音場感も悪くない。ヴェルディの序曲・前奏曲集といえば2枚組のカラヤン盤も有名だが、オイシイところをコンパクトに一枚にまとめ、しかもエンタテインメント性豊かに楽みたいのならば、やはりこのアバド盤に指を折りたい。