(英題:LATE BLOSSOM)良いところもあるが、見終わってみれば韓国映画得意の“お涙頂戴ドラマ”でしかなく、印象としては芳しいものではない。一頃は若い男女を主人公にしたメロドラマの輸入・公開が目立っていた韓国作品だが、韓流ブームも去った今はそういう体裁のものは飽きられた感がある。ならばということで、主人公をシニア世代にして渋めのセンを狙ったと、そういう安直な姿勢しか窺えないのだ。
隠居後の小遣いの足しにするべく牛乳配達のアルバイトをしているマンソクは、ある朝廃品回収をしている老女ソンを転倒させてしまう。幸いケガも無かったが、マンソクは彼女のことを気に入り、毎朝の出会いを楽しみにするようになる。やがて彼はソンが世話になっている駐車場の管理人グンボンとその認知症の妻と知り合い、楽しい時間を過ごすが、過酷な運命は彼らを追い詰めてゆく。
まず、どうしてマンソクがソンと相思相愛の関係になるのか、そのあたりの描写が不十分だ。彼は根は優しいらしいが物腰はぶっきらぼうで、このトシになっても周囲に友人はいない。いくら彼女が穏やかな性格でも、そう簡単に仲良くなれるはずがない。
さらにソンの不幸な生い立ちはいかにも大時代的で、現在の話とも思えない。ハッキリ言って“泣かせのためのモチーフ”である。グンボン夫妻の扱いに至っては“不幸のための不幸”でしかなく、観ていて不快だった。最初から登場させない方がマシだったかもしれない。
チュ・チャンミンの演出は歯切れが悪く、話自体に無理があるのに説明的なシークエンスを挿入しようとして、映画のリズムを崩してしまっている。甘ったるいBGMに感傷的な場面を重ねるあたりも気恥ずかしい。ラストの“映像処理”なんか、もろに赤面ものである。もっと落ち着いたストーリー展開と節度をわきまえた描写が出来ないものか。これだから韓流ドラマは始末に負えない。
あまりケナすのも何だから少しは良い部分も挙げておくと、気難しいマンソクに友だちが出来たことを実に肯定的に扱っているところだ。まあ、映画としてはその段取りが上手く説明されていないが、年を取っても人間関係を諦めてはいけないという真摯なメッセージは伝わってくる。
そして主演のイ・スンジェとユン・ソジョンの好演だ。自分では納得出来ない人生を送りつつ、いつの間にか老いてしまった主人公達の諦念に満ちた悲哀をうまく表現していた。下世話なメロドラマ路線を取っていなかったら、もっと良い映画になっていたかもしれない。