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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「第11回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その3)

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 数百万円の高級機がズラリと並ぶ中、一番印象に残ったのはリーズナブル・プライスであるOLASONICのNANOCOMPO(ナノコンポ)である。OLASONICはプリント基板や組込マイコン開発設計を主な業務とする東和電子が展開するオーディオブランドで、業界ではニューカマーだが、エンジニアは各有名メーカーに在籍していた手練れのスタッフを集めているという。

 出品されていたのはDAC内蔵プリメインアンプのNANO−UA1、 CDトランスポートのNANO−CD1、メインンプのNANO−A1、ネットワークオーディオプレーヤーのNANO−NP1などである。なお、デモに使われていたスピーカーは独ELAC社のFS 407であった。



 まず驚くのがこのNANOCOMPO、とても小さいのである。CDケース約3枚分の大きさしかない。加えて、エクステリアの質感が高い。安っぽさは皆無。アルミ筐体の部材を見せてもらったが、ガッチリと作り上げられている。ちなみに、2013年度のグッドデザイン賞を受賞している。

 価格はNANO−UA1が7万円、NANO−CD1が6万円、その他の製品も10万円を切っている。ミニコンポよりは値が張るが、決して高くは無い。ピュア・オーディオの“相場”からすれば、エントリークラスといっても良いだろう。この小さなコンポーネントが、フロアスタンディング型のFS 407を朗々と鳴らしてしまったのには驚いた。

 もちろん他社の数十万円級の高級アンプに比べれば質的には及ばないものの、サイズと価格を考えれば文句は無い。音質は大っぴらにハイファイ度を追求したものではないが、バランスが良くてレンジも適度に広がり、特定帯域での不自然な強調感や向こう受けを狙った着色とは無縁だ。意外な力感もあり、繋ぐスピーカーを選ぶことはないと思わせる。また、縦置きが可能だというのも嬉しい。しかも、NANO−CD1はディスプレイも縦表示に出来る。

 メーカーのスタッフは“スピーカーは昔に比べると現在はコンパクトで高性能のものが出回ってきているが、アンプ類は相変わらず無駄にサイズがデカい”というような意味のことを言っていたが、これは日頃私が考えていることと同じで、大いに共感を覚えた。

 コンセプトとしては70年代に松下電器(現Panasonic)がTechnicsブランドで発売していた“コンサイス・コンポ”を思わせる。こういう商品こそ売れて欲しい。それも、ピュア・オーディオに興味のない多くの一般ピープルに対してアピールしてもらいたい。

 家電量販店でも扱っているらしいが、デパートやファッション関係ショップ、インテリア用品店などに並べても面白いだろう。とにかく“オーディオ機器はとにかくデカくて重ければ良い”と思い込んでいる旧来型のマニアを切り捨てて業界の健全化を図る意味でも、有意義な製品だと思う。



 多くの入場者の注目を集めていたのは、英国B&W社のスピーカー、805 Maserati Editionである。自動車メーカーのマセラティとのコラボレーションにより、人気モデルの805Dをチューンナップしたものだ。世界で500台の限定製品であり、日本にはそのうち100台が入ってくる。

 聴いてみると、確かにいつものB&Wのサウンドに明るく艶っぽいイタリア風味がブレンドされたような音だ。まあ、悪くはないのだが、イタリアン・テイストが好きならばイタリア製のスピーカーを買った方が良いのではないかという気もする。

 ちなみに、価格はペアで160万円強だ。いくらスピーカースタンド(置き台)込みの値段とはいっても、ノーマルの805Dが60万円弱なのだから、これは高すぎるのではないだろうか。そもそも、160万円あれば上位機種の803Dを買ってもお釣りが来る。

 しかしながら、たぶん限定品という表看板に弱いユーザーは買ってしまうのだろう(笑)。話によると、800シリーズはB&Wの上級機ながら、日本で同社製品の中ではよく売れているらしい。不況にも関わらず、世の中には金持ちが多いようだ。もちろん私は、ノーマルの805Dさえ買えない懐具合である(爆)。

(この項つづく)

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