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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「八犬伝」

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 製作意図がよく分からない映画である。滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」は長大であり、1950年代に東映がまともに映画化した際は五部作だった。もっとも、各1時間ほどの中編だったらしいが、それでも現時点でやろうとすると長編三部作にはなる。ところがこの映画の原作は、山田風太郎著「八犬伝」だ。ならばその小説を扱う必然性があったのかというと、それは感じられない。有り体に言えば、この原作だったら一本の映画に収められるという、そんな帳尻合わせ的な思惑しか見えてこないのだ。

 映画は2つのパートが同時進行する。一方は八犬士の活躍を描く元ネタをトレースし、もう一方では滝沢馬琴と友人である絵師の葛飾北斎を主人公に、この大河小説が生まれる過程を描いている。八犬士が活躍するパートは面白くない。「南総里見八犬伝」の粗筋を知っておかないと何が何だか分からないし、そもそも映像がショボすぎる。さらに殺陣が低調で、アクション場面がさっぱり盛り上がらない。出ている面子もテレビの“イケメン戦隊もの”と大して変わらないレベルだ。



 ならば馬琴と北斎の関係を描く部分はどうかというと、これはそれなりに見応えはある。何しろ役所広司に内野聖陽、黒木華、寺島しのぶ、磯村勇斗などの手練れが集められているのだ。特に立川談春演じる鶴屋南北が出てくるシークエンスは出色である。しかし、馬琴と北斎を主人公にした映画では過去に新藤兼人監督の「北斎漫画」(81年)という傑作があり、それに比べれば本作は分が悪い。

 監督の曽利文彦の仕事ぶりは、表面的には賑々しいが深みが無いというパターンは相変わらず。キッチュな味わいで場を保たせるケースならばともかく、今回のように多大な予算投入が必要な素材を扱うと、どうも力不足の感が否めない。第一、作り手に八犬士に対してどれほどの思い入れがあったのかも不明だ。

 あと関係ないが、私が鑑賞した際には上映中に八犬士の各プロフィールに関して隣のカミさんに蕩々と解説していたオヤジがいて、とても気分を害した。席が離れていたので直接注意は出来なかったが、マナーをわきまえない輩はどこにでもいるものだと憤慨した次第である。

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