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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「メリー・ポピンズ」

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 (原題:Mary Poppins)64年作品。昔から断片的にはテレビ画面で見ているが、東宝系で展開されている“午前十時の映画祭”において今回初めてスクリーン上で全編通して観ることが出来た。ウォルト・ディズニー・プロによるミュージカルの代表作とされており、実際にとても楽しい時間を過ごせた。

 1910年。ロンドンの高級住宅地に住むバンクス氏はキレ者の銀行員だが、家庭では気むずかし屋で妻子との関係は上手くいっていない。その妻も婦人参政権運動に没頭していて、子供は放任状態だ。ある日、子供たちの腕白ぶりに手を焼いていたメイドがとうとう辞めてしまう。バンクス氏が替わりのメイドを募集すると、ベテランの厳格な人材を望んでいたはずが、それとは懸け離れた若くてキレイで陽気な女がやってくる。彼女はメリー・ポピンズと名乗り、不思議な力で家事をさっさと片付け、アッという間に子供たちをも手懐けてしまうのだった。

 異分子が入り込んで家長の頑なな心を解きほぐし、皆がハッピーになるという、言うなれば楽天的で予定調和の話だ。しかしながら、ロバート・スティーヴンソン監督による語り口はすこぶる面白い。

 メリーは妖精的な存在で、同じく半妖精(?)みたいな大道芸人のバートと一緒に子供たちを夢の世界に連れて行く。皆で絵の中に入って“冒険”を繰り広げる有名なシークエンスは噂通りの素晴らしさだ。実写とアニメーションとのコラボであるが、まずはCGもない時代によくこれだけのものが作れたものだと感心するが、両者の“呼吸”がピッタリと合ってミュージカルの楽しさを演出している点には脱帽である。

 後半、子供たちの思わぬ行動により父親の勤務先の銀行が取り付け騒ぎに見舞われるくだりは、なかなかのスペクタクル(笑)。それと平行して、煙突屋たちによる大々的なダンスショーが展開し、映画的興趣は高まるばかりだ。

 メリー役のジュリー・アンドリュースは本作でオスカーを手にしたが、正直言って「サウンド・オブ・ミュージック」や後年の「ビクター/ビクトリア」などの方がアカデミー賞に相応しいパフォーマンスだったと思う。だが、悪くない演技であることは確かだ。バートに扮するディック・ヴァン・ダイクはさすがの芸達者ぶりを見せ、銀行オーナーとの一人二役までやってのけるのだから嬉しくなる。

 ちょっと上映時間が長いこと、そして子供たちが全然可愛くないことが難点かもしれないが(笑)、良質の娯楽映画であることは疑いようがない。「2ペンスを鳩に」や「チム・チム・チェリー」といったお馴染みのナンバーをはじめとするシャーマン兄弟のスコアも言うこと無し。

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