(原題:UGLIES)2024年9月よりNetflixから配信されたディストピアSF作品。ラストが尻切れトンボであり、これは明らかに続編の製作を前提に撮られたものだろう(もしもパート2以降の予定が無く、これで終わりならばシャレにならない)。とはいえカネは掛けられていて映像の喚起力はかなりあるので、観て損は無いとも言える。
遠い未来、人類は世界戦争によって一時はその数を大幅に減らしていた。その後、残った人々はクリーンで効率的なエネルギー源を開発することに成功し、右肩上がりに復興を遂げる。さらに争いを避けるため、当局側は16歳を境に全員に“理想的な”美容整形手術を義務付ける。すべての者の外見に欠点が無ければコンプレックスや妬み嫉みが生じず、結果として戦争なども起こりようも無いという理屈だ。
16歳の誕生日を間近に控えて整形手術を心待ちにしていたタリー・ヤングブラッドは、先に手術を受けたボーイフレンドのペリスが人格さえも変えられていたことにショックを受け、このシステムに疑問を持つ。そして彼女は居住エリアの外で“昔ながらの”生活を送るアナキストのデイヴィッドたちと接触し、抗議活動に身を投じる。
厳格に管理された未来社会で、そこに相容れない自由主義者たちがバトルを仕掛けるという構図は、今まで何度も取り上げられてきたネタで新味は無い。ただ、強制的な美容整形手術といったモチーフはいくらか興味を惹かれる。トンデモな理論であることは確かだが、ルサンチマンというものば外見が大きく関係しているのは事実だろう。ただし、変わるのは外観だけではなく頭の中身も同様だというのは、こういう方法論はファシズムと紙一重であることを示している。
映画は予想通りの展開を見せるが、マックGの演出は賑々しく、アクション場面はアイデア豊富で盛り上がる。メカ・デザインや外界の自然の風景は目を楽しませてくれる。ただ前述の通り、エンディングが確定されていない。続編が必須の御膳立てだろう。
主演のジョーイ・キングのパフォーマンスは悪くないのだが、元々が可愛い彼女が美容整形手術を望むというのは、ちょっと筋違いではないだろうか(笑)。キース・パワーズにチェイス・ストークス、ブリアンヌ・チュー、ラバーン・コックスなどの脇の面子も良くやっている。