(原題:LEAVE THE WORLD BEHIND)2023年12月からNetflixより配信。メッセージ性の強い映画であることは分かる。先の読めない作劇で退屈させないのも評価できよう。しかし、終わってみれば図式的な建て付けが目立ち、あまり愉快になれない。特に、平易なカタルシスを求める多くの鑑賞者にとっては不満の残る内容ではないだろうか。かくいう私も印象は芳しくない。
サンドフォード家の4人は週末をのんびりと過ごそうと、ニューヨーク州南東部のロングアイランドにある豪華な別荘をレンタルする。ところが、到着早々に正体不明のサイバー攻撃がアメリカ全土を覆い、携帯電話やパソコンが使えなくなる。さらにビーチではコントロールを失ったタンカーが座礁し、旅客機の墜落事故も起こる。
その夜、一家のもとに別荘のオーナーだというG・Hと名乗る男が、娘のルースを連れてやってくる。世間が騒然としてきたので、取り敢えず家に戻ってきたのだという。疑心暗鬼に駆られるサンドフォード一家だが、その間にも彼らの周囲には異常な現象が次々と発生する。ルマール・アラムによる同名ベストセラー小説の映画化だ。
不安を煽るようなアクシデントが頻発し、その正体は説明されない。この漠然とした終末感の創出は序盤では上手くいっている。だが、この思わせぶりな姿勢が中盤以降も続くといい加減面倒くさくなってしまうのだ。特に、突然耳をつんざくような雑音が流れてきたと思ったら、次には鹿の大群が現われたり、なぜかフラミンゴの群れがプールに飛来したりといった、明らかに“やり過ぎ”と思われるネタが続くとシラケてしまう。
サンドフォード家の主婦アマンダはキレ者のキャリアウーマンらしいが人間嫌いを隠そうともせず、黒人であるG・Hを軽く見ている。また近所に住むダニーはアジア人に対する偏見があるようだ。この設定は製作に関与しているバラク・オバマとミシェル・オバマの意向が反映しているのかもしれないが、このリベラル色を前面に打ち出した雰囲気は、いかにも露骨であまり気乗りしない。
サム・エスメイルの演出はサスペンスの盛り上げ方は悪くないものの、筋書きに深みが無いので空回りしている感がある。アマンダ役のジュリア・ロバーツは“相変わらず”で別にコメントもしたくないが、マハーシャラ・アリにイーサン・ホーク、ケヴィン・ベーコンといった面々はキッチリと仕事をこなしている。ファラ・マッケンジーやチャーリー・エヴァンス、マイハラといった若手も悪くない。