(原題:FIRST COW )困った。どこが良いのかさっぱり分からない。ただし世評は高い。第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門の出品作であり、第86回ニューヨーク映画批評家協会賞をはじめ少なくない数のアワードを獲得している。我が国でもホメているコメンテーターはけっこういると聞く。しかし、個人的に面白く思えないシャシンを無理して持ち上げる道理は無い。率直に感想を述べるだけだ。
19世紀前半のオレゴン州。東部で料理人として働いていたクッキーはこの地に流れ着き、狩猟者たちの料理番などを務めて糊口を凌いでいた。ある日彼は森の中で中国人移民キング・ルーと出会う。訳ありの彼を匿ったクッキーはやがて意気投合。儲け話を探す2人が目にしたのが、裕福な仲買商がこの地に初めて導入した一頭の乳牛だった。夜ごとその牛からミルクを盗み、ドーナツを作って町で売り出したところ評判になり、彼らはまとまった金を手にする。だが、そんなインチキな話が長続きするはずもなく、2人は一転して追われる立場になる。
本作の見どころを無理矢理挙げるとすれば、西部開拓時代が始まる前の西海岸北部を舞台にしているところだろうか。この時代が題材になるのは珍しいし、温帯雨林が広がるオレゴン州山間部の風景は独特の雰囲気を醸し出す。しかし、それ以外はまったくダメだ。主人公の2人はあまり魅力が無いし、そもそもやっていることがセコい。単なるケチなミルク泥棒の話だ。
それでも演出にキレがあったり作劇にスピード感があれば良いのだが、ケリー・ライカートの演出は冗長で、観ていて眠気を催す。たぶん本作を評価している向きは、このキャラクター設定に往年のアメリカン・ニューシネマの残滓を見たのだろうが、そんなことは個人的にはどうでもいい。映画の最初と最後が繋がるような構造も、あまり効果的とも思えない。
主演のジョン・マガロとオリオン・リーはパッとしない。仲買商に扮したトビー・ジョーンズはさすがに存在感はあったが、目覚ましい演技を披露しているわけでもない。音楽担当のウィリアム・タイラーはあまり聞かない名前だと思ったが、インディーフォークの分野では知られた存在らしい。そういえば監督のカートライトもインディペンデント映画作家ということで、何やらマイナーな世界で繋がった人材が内輪ネタで製作し、それをスノッブな映画ジャーナリズムが評価しているだけという構図が感じられ、あまり愉快になれない。
19世紀前半のオレゴン州。東部で料理人として働いていたクッキーはこの地に流れ着き、狩猟者たちの料理番などを務めて糊口を凌いでいた。ある日彼は森の中で中国人移民キング・ルーと出会う。訳ありの彼を匿ったクッキーはやがて意気投合。儲け話を探す2人が目にしたのが、裕福な仲買商がこの地に初めて導入した一頭の乳牛だった。夜ごとその牛からミルクを盗み、ドーナツを作って町で売り出したところ評判になり、彼らはまとまった金を手にする。だが、そんなインチキな話が長続きするはずもなく、2人は一転して追われる立場になる。
本作の見どころを無理矢理挙げるとすれば、西部開拓時代が始まる前の西海岸北部を舞台にしているところだろうか。この時代が題材になるのは珍しいし、温帯雨林が広がるオレゴン州山間部の風景は独特の雰囲気を醸し出す。しかし、それ以外はまったくダメだ。主人公の2人はあまり魅力が無いし、そもそもやっていることがセコい。単なるケチなミルク泥棒の話だ。
それでも演出にキレがあったり作劇にスピード感があれば良いのだが、ケリー・ライカートの演出は冗長で、観ていて眠気を催す。たぶん本作を評価している向きは、このキャラクター設定に往年のアメリカン・ニューシネマの残滓を見たのだろうが、そんなことは個人的にはどうでもいい。映画の最初と最後が繋がるような構造も、あまり効果的とも思えない。
主演のジョン・マガロとオリオン・リーはパッとしない。仲買商に扮したトビー・ジョーンズはさすがに存在感はあったが、目覚ましい演技を披露しているわけでもない。音楽担当のウィリアム・タイラーはあまり聞かない名前だと思ったが、インディーフォークの分野では知られた存在らしい。そういえば監督のカートライトもインディペンデント映画作家ということで、何やらマイナーな世界で繋がった人材が内輪ネタで製作し、それをスノッブな映画ジャーナリズムが評価しているだけという構図が感じられ、あまり愉快になれない。