(原題:DECIBEL )周囲の騒音が100デシベルを超えると爆発するというヤバい爆弾を仕込んだ犯人と、それを追う当局側の人間という、まるでヤン・デ・ボン監督の「スピード」(94年)のバリエーションみたいな御膳立てだと思ったら、設定がもう一捻りされていて興味深く観ることが出来た。やはり昨今の韓国映画は、何かしら見どころを用意してくれる。
釜山の町のあちこちに仕掛けられた“音圧関知爆弾”により、捜査当局はキリキリ舞いさせられていた。そんな中、元海軍副長カン・ドヨンのもとに一本の電話が掛かってくる。それは爆破犯からのもので、次のターゲットは5万人の観客を集めているサッカースタジアムだという。ドヨンは競技場に急行し、偶然居合わせた放送記者のオ・デオと共に爆弾を発見し無力化するため奔走する。
だが、容疑者はただの愉快犯ではなかった。事の発端は、数年前ドヨンが潜水艦の艦長として訓練に参加した際、謎の魚雷攻撃により遭難するという事故だった。そして、ドヨンのスタンドプレイ的な言動に疑いを持った軍事安保司令部のチャ・ヨンハンも、別の方向から事件を追う。
高い知能を持つ犯人とドヨンたちとの駆け引きはスリリングで、特にドヨンの妻が警察官で、同時に2つの爆弾を仕掛けて夫婦ともども窮地に陥るという展開は出色。成り行きで巻き込まれたオ・デオの捨て身の奮戦にも思わず応援したくなる。だが、潜水艦の事故をめぐる真相は、爆弾テロよりも重いのだ。絶体絶命の状況で、ドヨン艦長が下した決断は身を切られるほどシビア。この事態を目の当たりにすれば、爆弾魔のような狼藉に及ぶ者も出てくることも想像できる。
ただし、あまりにも潜水艦内の出来事がヘヴィであるため、爆弾テロのパートが“軽く”見えてくるのも仕方がない。脚本も担当したファン・イノの演出はパワフルで、少々シークエンスの繋ぎ方に荒っぽさはあるが、最後まで観る者を力で捻じ伏せてくる。ラストの扱いなど、見事だと思う。
主演のキム・レウォンをはじめ、敵役のイ・ジョンソク、オ・デオに扮するチョン・サンフンと、皆良い面構えをしている。イ・ミンギにパク・ビョンウン、パク・ビョンウンら脇の面子も申し分ない。それにしても、潜水艦事故の原因になった魚雷の正体には呆れてしまうと同時に、ここまで自国の失態をネタにしてしまう大胆さには感心してしまった。日本製の娯楽作品ならば、まず扱われないモチーフだろう。