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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

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 (原題:KILLERS OF THE FLOWER MOON)いくら何でも長すぎる。3時間半近くも引っ張るような話ではないだろう。もっとも、マーティン・スコセッシ監督が2019年に撮った「アイリッシュマン」も210分というロング・ムービーだったのだが、これは彼が得意なギャング物だけあって、最後までテンションが落ちること無く楽しませてくれた。対して、この新作はスコセッシが今まで手掛けていなかった西部劇。そのためか、勝手が分からず無駄に尺ばかりが伸びてしまったような印象を受ける。

 1920年代のオクラホマ州オーセージは元々先住民オーセージ族の居住地であったが、石油が産出されることが判明してから、オーセージ族は石油鉱業権を保持し高収益を得ていた。しかし、先住民は次々と謎の死を遂げていく。そこに暗躍していたのは利権を狙う白人の実業家連中だった。そんな中、元軍人のアーネスト・バークハートは叔父のウィリアム・ヘイルを頼ってこの地にやってくる。ヘイルはオーセージ族の娘モーリーとアーネストとの縁談をまとめ上げるが、早速モーリーを亡き者にして石油利権を白人側に相続させようとする陰謀が企てられる。



 こういう、あまり知られていない歴史的事実を取り上げたという意義は認めたい。だが、ハッキリ言って“たぶん、そういうことも起きたのだろうな”という想像は、誰にでも出来る。なぜなら、白人側の横暴を描いた西部劇は今までも少なからず存在しているからだ。利権が先住民の方に転がり込んでくる事態になれば、よからぬ白人どもが狼藉に走るのは当然である。

 映画の大半はこういう白人どもの悪巧みが延々と続くのだが、描き方が平板でメリハリが無い。スコセッシ御大の得意技であるギャング同士の抗争劇とは違い、一方的な不祥事を紹介するだけなので盛り上がりは期待できない。主要登場人物のヘイルとアーネスト、そしてモーリーにしても外見だけはそれらしいが中身まで突っ込んで描かれているかというと、かなり不十分だ。

 後半に元テキサス・レンジャーの特別捜査官トム・ホワイトが関与してきてやっと映画が動き出すものの、それならば最初から(後にFBIとして組織される)捜査当局の側から映画を組み立てるべきであった。そうすれば、無駄に上映時間が延びることも無かっただろう。

 レオナルド・ディカプリオとロバート・デ・ニーロの共演が話題らしいが、両者とも本作では機能していない。リリー・グラッドストーンにジェシー・プレモンス、ブレンダン・フレイザー、ジョン・リスゴーといった顔ぶれも印象に残らず。良かったのは、これが遺作となったロビー・ロバートソンの音楽ぐらいだ。それにしても、ラストの“茶番”はいったい何事か。観客をバカにしているとしか思えなかった。

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