2022年作品。一つ間違えばキワ物として片付けられそうな題材だが、不必要なケレンや内輪ネタに走ることなく正攻法で作られているのは好ましい。タイトルにある通り、物語の発端こそ大河ドラマがモチーフになっているものの、中身は時代劇と現代劇が上手いバランスで振り分けられており、それぞれが手堅く仕上がっていることに感心した。地味ながら、存在感のある映画だ。
千葉県香取市役所では、町おこしのために郷土の偉人である伊能忠敬を主人公にした大河ドラマの企画をNHKに売り込もうというプロジェクトが立ち上がる。チームリーダーである池本保治は後輩の木下浩章と共に、大物シナリオライターの加藤浩造に仕事を頼もうとするが、最初は色よい返事はもらえない。
池本らは何とか拝み倒して引き受けさせたが、忠敬は地図完成の3年前に亡くなっていたという事実が発覚し、加藤は執筆を渋る。ここで映画は時代劇になり、忠敬の死を隠して地図を完成させようとした幕府天文方の高橋景保と忠敬の弟子たちの奮闘ぶりが展開することになる。立川志の輔による新作落語「大河への道 伊能忠敬物語」の映画化だ。
確かに伊能忠敬の業績は、大河ドラマとして取り上げてもおかしくない。しかし私も恥ずかしながら、忠敬が志半ばに世を去ったことは知らなかった。これではさすがに高視聴率が義務付けられたTVシリーズのネタとしては不向きだ。ところが皮肉なことに、このあたりの事情は映画の素材として悪くない。原作物ではあるが、着眼点としては非凡だと思う。
面白いのは、時代劇のパートに現代劇でのキャストがそのまま出ていること。誰がどの役を演じているのか、あるいは相応しいのか、そのあたりを見極めるだけでも興趣を呼び込む。しかも、景保らの活躍は面白く綴られており飽きさせない。特に忠敬の生存を疑う幕府側との駆け引きはけっこうスリリングだ。地図作成のプロセスも過不足なく紹介されている。脚本担当の森下佳子は良い働きをしていると思う。もちろん終盤には舞台は現代に戻るのだが、その顛末も瑕疵なくまとめられている。
中西健二の演出は派手さは無いが堅実だ。噺家の手によるストーリーなのでギャグも盛り込まれているが、上手くこなしている。企画にも関与した主演の中井貴一は好演。松山ケンイチに北川景子、岸井ゆきの、和田正人、西村まさ彦、平田満、草刈正雄、橋爪功と役者も揃っている(立川志の輔も顔を見せる)。玉置浩二の主題歌はあまり合っているとは思わないが、安川午朗の音楽は適切だ。
千葉県香取市役所では、町おこしのために郷土の偉人である伊能忠敬を主人公にした大河ドラマの企画をNHKに売り込もうというプロジェクトが立ち上がる。チームリーダーである池本保治は後輩の木下浩章と共に、大物シナリオライターの加藤浩造に仕事を頼もうとするが、最初は色よい返事はもらえない。
池本らは何とか拝み倒して引き受けさせたが、忠敬は地図完成の3年前に亡くなっていたという事実が発覚し、加藤は執筆を渋る。ここで映画は時代劇になり、忠敬の死を隠して地図を完成させようとした幕府天文方の高橋景保と忠敬の弟子たちの奮闘ぶりが展開することになる。立川志の輔による新作落語「大河への道 伊能忠敬物語」の映画化だ。
確かに伊能忠敬の業績は、大河ドラマとして取り上げてもおかしくない。しかし私も恥ずかしながら、忠敬が志半ばに世を去ったことは知らなかった。これではさすがに高視聴率が義務付けられたTVシリーズのネタとしては不向きだ。ところが皮肉なことに、このあたりの事情は映画の素材として悪くない。原作物ではあるが、着眼点としては非凡だと思う。
面白いのは、時代劇のパートに現代劇でのキャストがそのまま出ていること。誰がどの役を演じているのか、あるいは相応しいのか、そのあたりを見極めるだけでも興趣を呼び込む。しかも、景保らの活躍は面白く綴られており飽きさせない。特に忠敬の生存を疑う幕府側との駆け引きはけっこうスリリングだ。地図作成のプロセスも過不足なく紹介されている。脚本担当の森下佳子は良い働きをしていると思う。もちろん終盤には舞台は現代に戻るのだが、その顛末も瑕疵なくまとめられている。
中西健二の演出は派手さは無いが堅実だ。噺家の手によるストーリーなのでギャグも盛り込まれているが、上手くこなしている。企画にも関与した主演の中井貴一は好演。松山ケンイチに北川景子、岸井ゆきの、和田正人、西村まさ彦、平田満、草刈正雄、橋爪功と役者も揃っている(立川志の輔も顔を見せる)。玉置浩二の主題歌はあまり合っているとは思わないが、安川午朗の音楽は適切だ。