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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ハート・オブ・ストーン」

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 (原題:HEART OF STONE)2023年8月よりNetflixより配信されたスパイ・アクション。見かけはハデだが、中身は大味だ。B級感は否めず、鑑賞後はストレスが残る。その原因は、筋書きが練られていないからだ。活劇編だろうと何だろうと、大切なのは脚本である。それらしいモチーフを並べて賑やかに展開させるだけでは、映画のクォリティがアップすることは無いのだ。

 MI6のエージェントであるレイチェル・ストーンは、別に世界平和のために活動するチャーターという秘密組織にも属している。チャーターは世界中のあらゆるシステムを操作できる“ハート”と呼ばれる超進化型AIを保有しており、これを使って未来を予測することもできる。ある時、一仕事終えたレイチェルとMI6の仲間は、思わぬ身内の裏切りに遭い絶体絶命のピンチに陥る。事件の黒幕は“ハート”を我が物にしようとする国際的な武装組織で、レイチェルは敵を駆逐するため世界中を飛び回る。

 まず、MI6とチャーターとを“掛け持ち”している主人公のスタンスが分かりにくい。そもそも“掛け持ち”が出来るのかどうかも怪しいが、チャーターの“首脳陣”は各国の情報機関の幹部ではあっても、とても“ハート”のような大規模なシステムを作り出せる面子とは思えない。そして何より、すべての情報デバイスにアクセスが可能だという“ハート”が、裏切り者の存在や謎の武装組織の暗躍を察知できなかったというのは噴飯ものだ。

 レイチェルは襲ってくる敵と各地で対峙するのだが、どうも行き当たりばったりに暴れ回っているようにしか見えない。それに“ハート”の存在は、どうしても最近公開された「ミッション:インポッシブル デッドレコニング」の設定と被るところがあり、明らかに分が悪い。トム・ハーパーの演出はマッチョイムズ(?)全開で、次々と繰り出される主人公の危機また危機を、力づくの爆破シーンなどでねじ伏せようとする。しかし、ストーリーの粗っぽさは如何ともしがたく留飲を下げるところまでは至らない。

 主演のガル・ガドットは相変わらずだが、彼女を見ていると“ワンダーウーマンだったら秒で解決できる”という印象は拭えない(笑)。別の俳優を持ってきた方がインパクトが大きくなったと思われる。ジェイミー・ドーナンにソフィー・オコネドー、マティアス・シュバイクホファー、アーリアー・バットという脇の顔ぶれは可もなく不可もなし。続編が作られそうな気配がするが、観るかどうかは未定だ。

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