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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「オレンジ・ランプ」

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 多分に啓蒙的な内容であり、劇場で公開するよりも職場の人権研修などで流す方が相応しいと思った。しかしながら、紹介されている事実の数々はとても興味深くて参考になるものばかり。その意味では決して観て損はしない。また、語り口は丁寧で不快になるような部分は無く、各キャストは十分仕事をしている。安心して対峙できる映画である。

 都内の自動車ディーラーに勤める39歳の只野晃一は、近頃よく物忘れをするようになった。ついには仕事上の打ち合わせまで失念するようになり、たまらず医師の診断を受けるが、結果は若年性認知症だった。そんな彼に妻の真央は献身的に接するが、晃一は将来を悲観して落ち込むばかり。しかし、ある出会いをきっかけに2人は何とか前を向くようになる。実際に若年性アルツハイマー型認知症と診断された会社員とその家族を描いた、山国秀幸の実録小説の映画化だ。



 映画は、苦難を乗り越えた只野夫婦がにこやかにマスコミの取材を受けるシーンから始まる。本作が悲しい内容にはならないことを冒頭で明かしているわけで、いくらかでも波乱の展開を期待している向きには物足りないが(笑)、作品の性格上これが正解かと思う。何より、若くして認知症に冒された者たちのサークルが実在し、励まし合いながら共に生きようとする様子が描かれるのは有意義だ。

 そして認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で手助けする“認知症サポーター”の養成が厚労省主導で展開されていることも初めて知った。その講座を受講した者には柿色のブレスレットが支給され、本作のタイトルはそこに由来している。

 この映画の主人公は随分と恵まれていることは確かだ。夫婦仲は良く、娘二人も素直な性格。晃一は元々敏腕セールスマンであり、同僚や上司の信頼も厚い。地域のフットサルのサークルにも参加し、チームメイトは皆いい奴だ。ただ、斯様な御膳立てはそれほどの瑕疵にはならない。本作の意義は、あくまで認知症に対するフォローの実態を伝えることなのだ。

 三原光尋の演出は丁寧で、ドラマはスムーズに進む。真央に扮する貫地谷しほりの演技はさすがに上手く、物語の核をしっかりキープする。晃一役の和田正人は落ち着いたパフォーマンスを見せ、伊嵜充則に山田雅人、赤間麻里子、赤井英和など脇の面子も万全だ。ただし、過度に白茶けた映像はイマイチ。もっとナチュラルな絵作りをして欲しかった。

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