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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「オットーという男」

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 (原題:A MAN CALLED OTTO )ハリウッドでヨソの国の映画をリメイクするとロクな結果にならないのが常だが、最近では「コーダ あいのうた」(2021年)のような例外もある。では、スウェーデン映画の秀作「幸せなひとりぼっち」(2015年)の再映画化である本作はどうか。結論から言えば、そんなに悪い出来ではない。元ネタを知らない観客ならば、十分に感銘を受けるだろう。しかしながら、個人的には承服しがたい。それは極論すれば、アメリカ製娯楽映画のルーティンにこの題材をインストールした際の違和感に尽きる。

 オハイオ州の地方都市に住む初老の男オットーは、町一番の嫌われ者だ。とにかく曲がったことを許さない。毎日近所をパトロールしてはルール違反者に対し諄々と注意する。とことん無愛想で、野良猫には八つ当たり。だが、彼は妻に先立たれて仕事も定年退職し、生きる張り合いを失いつつあった。とうとう自ら命を絶とうとするが、向かいの家に越してきた陽気なラテン系の一家が何かと邪魔して自殺も出来ない。仕方なく彼らと付き合うことにしたオットーだったが、皮肉なことにそれが彼の生活を変えていく契機になる。



 主人公に扮するのはトム・ハンクスだ。この時点で本作の建付けは予想できてしまう。要するにオットーは悪ぶっているが実は“いい人”であり、映画が進むにつれてそれが前面に出てきて、後半はハートウォーミングな展開になるということが丸分かりなのだ。もしもハンクスに本当の“性根の腐った奴”を演じさせれば凄いことになると思うが、彼自身が製作にも関与しているのでそれは無理な注文である。

 しかも、作劇自体をハンクスのキャラクターに“代弁”させているせいか、主人公が元ネタで紹介されていた主人公の両親のエピソードや、彼が最近まで勤めていた職場をどうして選んだのかといった重要なモチーフが抜け落ちてしまった。

 マーク・フォースターの演出は堅実で破綻は無く、マリアナ・トレビーニョにマヌエル・ガルシア=ルルフォ、レイチェル・ケラーといった他のキャストも万全だ。若き日のオットーを演じるトルーマン・ハンクスは、主役の実の息子である。映画初出演とのことだが、危なげない仕事ぶりだ。

 余談だが「幸せなひとりぼっち」で印象的だった主人公と友人との“クルマの自慢合戦”はボルボとサーブのバトル(笑)だったが、本作ではGMとフォードに置き換えられている。だが、やっばりインパクトが大きいのは元ネタの方だ。特にサーブは国民的ブランドと言われながら今は存在しないので、作者の拘りもひとしおだったと思われる。

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