(原題:The Truman Show )98年作品。SF仕立てのメディア風刺劇で、封切り当時は斬新な内容だったのかもしれないが、今から考えるとアイデア倒れの感が強い。何しろあの頃は、まさかネット環境にある多くの者がやがて勝手に情報発信を始め、テレビのバラエティ番組の地位を脅かすようになるとは思いもしなかったのだ。しかも、決して作劇は丁寧ではなく欠点も目立つ。キャストの健闘だけが救いである。
離島にある町シーヘブンで保険会社に勤めるトゥルーマン・バーバンクは、生まれてから一度も島から出たことは無い。それは子供の頃に父を水難事故で亡くし、海を渡ることに恐怖心を覚えるようになったからだ。ところがある日、彼が雑踏の中で見かけたホームレスの老人が、死んだはずの父親であることに気付く。さらにその直後、その老人は何者かに連れ去られてしまう。
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実はトゥルーマンは出生時から今まで24時間テレビ撮影されており、そのままリアリティ番組「トゥルーマン・ショー」として世界中でオンエアされていたのだった。自らの境遇に疑問を持つようになった彼は、シーヘブンから脱出することを考えるようになる。
まず、いくら主人公がナイーヴだといっても、斯様なヴァーチャル世界においていい大人が今まで違和感を覚えずに生きていられたはずがない。また、どうして父親が“番組”に入り込めたのかも不明だ。トゥルーマンは学生時代に出会ったローレンのことを忘れられないようだが、彼女も“番組関係者”でもないのになぜ主人公に接触できたのか分からずじまいだ。
この“番組”を仕切っているチーフプロデューサーのクリストフは、トゥルーマンおよび彼が住む世界に対して全能の神のように振る舞うが、夜郎自大な態度が鼻につき愉快になれない。そもそも、この“番組”が世界中で高視聴率を記録するほどの面白いプログラムであるとは、あまり思えない。リアリティ番組を長期間持続させるには、対象を漫然と映すだけでは成立しないはずだが、そのあたりも本作は適当にスルーしている。
ラストの処理は思わせぶりながら、観ている側が知りたいのはトゥルーマンの“その後”であるはずなのに、まったく言及されていないのは手抜きだろう。監督のピーター・ウィアーは実績のある演出家だが、この映画はどうも“やっつけ仕事”の感が強い。それでも主役のジム・キャリーは頑張っており、ドラマが深刻になることを回避している。
エド・ハリスにローラ・リニー、ノア・エメリッヒ、ナターシャ・マケルホーンといった面子も申し分ない。それだけに作品のヴォルテージの低さが気になるところだ。なお、ブルクハルト・ダルウィッツとフィリップ・グラスによる音楽は評価したい。
離島にある町シーヘブンで保険会社に勤めるトゥルーマン・バーバンクは、生まれてから一度も島から出たことは無い。それは子供の頃に父を水難事故で亡くし、海を渡ることに恐怖心を覚えるようになったからだ。ところがある日、彼が雑踏の中で見かけたホームレスの老人が、死んだはずの父親であることに気付く。さらにその直後、その老人は何者かに連れ去られてしまう。

実はトゥルーマンは出生時から今まで24時間テレビ撮影されており、そのままリアリティ番組「トゥルーマン・ショー」として世界中でオンエアされていたのだった。自らの境遇に疑問を持つようになった彼は、シーヘブンから脱出することを考えるようになる。
まず、いくら主人公がナイーヴだといっても、斯様なヴァーチャル世界においていい大人が今まで違和感を覚えずに生きていられたはずがない。また、どうして父親が“番組”に入り込めたのかも不明だ。トゥルーマンは学生時代に出会ったローレンのことを忘れられないようだが、彼女も“番組関係者”でもないのになぜ主人公に接触できたのか分からずじまいだ。
この“番組”を仕切っているチーフプロデューサーのクリストフは、トゥルーマンおよび彼が住む世界に対して全能の神のように振る舞うが、夜郎自大な態度が鼻につき愉快になれない。そもそも、この“番組”が世界中で高視聴率を記録するほどの面白いプログラムであるとは、あまり思えない。リアリティ番組を長期間持続させるには、対象を漫然と映すだけでは成立しないはずだが、そのあたりも本作は適当にスルーしている。
ラストの処理は思わせぶりながら、観ている側が知りたいのはトゥルーマンの“その後”であるはずなのに、まったく言及されていないのは手抜きだろう。監督のピーター・ウィアーは実績のある演出家だが、この映画はどうも“やっつけ仕事”の感が強い。それでも主役のジム・キャリーは頑張っており、ドラマが深刻になることを回避している。
エド・ハリスにローラ・リニー、ノア・エメリッヒ、ナターシャ・マケルホーンといった面子も申し分ない。それだけに作品のヴォルテージの低さが気になるところだ。なお、ブルクハルト・ダルウィッツとフィリップ・グラスによる音楽は評価したい。