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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「グッモーエビアン!」

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 劇中で登場人物たちがつぶやく“ロックだねぇ”というセリフとは裏腹に、この映画は全然ロックしていない。別に“映画というのは常にロックしなければならない”というわけでもないが(笑)、本作においてはこの“ロックしている”というフレーズが物語のキーになっているだけに、ロックの何たるかが描かれなければ絵空事になってしまう。

 シングルマザーのアキと中学3年生の娘・ハツキは、小さなアパートでの2人暮らしを送っている。ある日、約2年間音信不通だったヤグが突然帰国し、アキとハツキの部屋に転がり込んでくる。ヤグはアキが十代で子供を身籠もったときからずっと側でフォローしていた男で、ハツキにとっては最も身近な大人の男だ。そんな中、ハツキの親友トモが気まずい雰囲気のまま転校することになり、ヤグが一肌脱ぐことになるが・・・・。

 アキとヤグは元パンクバンドのメンバーであったことから“ロックだねぇ”というフレーズが連発されることになるのだが、作劇自体はロックのリズムとは程遠く、モタモタしている。説明的なセリフが必要以上に多く、加えて説明的なシークエンスも目立ち、ストーリーが一向に前に進まない。

 さらに、アキとヤグのキャラクター設定にも問題がある。アキは娘に対する放任主義を公言しているが、いざハツキが自分の意志で進路を決めようとすると、真っ向から反対するのには呆れた。ヤグはハッキリ言って五月蠅いだけの“鬱陶しい野郎”であり、どうしてアキとハツキが当然のごとく受け入れているのか判然としない。

 また、こういう家庭では娘がグレるか、あるいはその兆候を見せてもおかしくないのだが、映画ではハツキが徹頭徹尾マジメに育っていたことを何の疑いもなく提示しており、このあたりもウソ臭い。

 アキ役の麻生久美子とヤグを演じる大泉洋は熱演だが、ストーリーが低調であるため、空回りしているようにしか見えない。肝心のバンドのライヴ場面は終盤にやっと登場するが、これが何の工夫も無く漫然とカメラを回しているような体たらくで、ロックの生々しさや攻撃性はほとんど出ていない。

 音楽の扱い方が上手い日本映画は少ないが、本作も本当にヘタである。それに、名古屋が舞台なので名古屋弁がポンポンと飛び出すのは当然ながら、使い方がわざとらしくてまったく効果が上がっておらず、時にイライラさせられた。この監督(山本透)は三流である。

 なお、ハツキ役の三吉彩花(かなりの長身 ^^;)とトモに扮する能年玲奈はイイ味を出していた。特に能年は独特の柔らかい雰囲気を持つ逸材で、今後の活躍が期待される。

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