(原題:BROKER)脚本がほとんど練り上げられていない。こういう穴だらけの筋書きでは、断じて評価するわけにはいかない。第75回カンヌ国際映画祭での優秀男優賞とエキュメニカル審査員賞の受賞は、いわば功労賞みたいなもので、それ自体が作品の出来映えを保証するものではないのだ。取り上げられた題材がアップ・トゥ・デイトなものであるだけに、もっと真摯に取り組んで欲しかったというのが正直な感想である。
釜山で昔ながらのクリーニング店を営む中年男サンヒョンと、いわゆる“赤ちゃんポスト”が設置された福祉施設で働く児童養護施設出身のドンスには“裏の顔”があった。2人は“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を横取りし、子供を欲しがる家庭に高額の手数料と交換に引き渡すというプローカー稼業で収入を得ていた。しかも、サンヒョンはヤバい筋からの借金がけっこうあり、その返済のためにもブローカーの仕事はやめられない。
ある日、2人は若い女ソヨンがポストに預けた赤ん坊を連れ去るが、翌日思い直して戻ってきたソヨンに問い詰められ、仕方なく2人は彼女と一緒に里親を探す旅に出る。一方、彼らを現行犯で逮捕しようと監視している2人の刑事は、尾行を開始する。
サンヒョンがカネに困っていることは分かるのだが、どうしてブローカーの仕事を選んだのかハッキリしない。実は彼には“家庭の事情”というものがあったらしく、それが何の伏線も無しに終盤に表に出てくるのは愉快になれない。ソヨンはある事件に巻き込まれているらしいのだが、華奢で若い女の身でそんな“犯行”に及ぶとは到底考えられない。また、ドンスが犯罪に手を染める動機付けも弱い。もっと切迫した事情を持ってくるべきだった。
さらに言えば、刑事たちの存在は果たして必要だったのか疑問だ。警察の捜査をモチーフとして採用するのならば扱いを強固にするのが当然ながら、ここではそれが成されていない。ロードムービーとしての興趣もほとんど出ておらず、せいぜい途中で“闖入者”が加わるぐらいで、工夫が足りない。ラストの扱いに至っては、いったい何が解決したのか分からないし、各キャラクターの去就も明確ではない。
是枝裕和の演出は平板で、これといった盛り上がりは見当たらない。主演のソン・ガンホは相変わらず達者な演技だが、彼にしてみれば今回は“軽くこなした”という程度だろう。カン・ドンウォンにペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨンといったキャストは悪くはないパフォーマンスを見せるが、殊更優れたものでもない。是枝監督は次回はどこで撮るのか分からないが(Netflixでの仕事になるという話もある)、いずれにしろ正攻法で取り組んでほしい。
釜山で昔ながらのクリーニング店を営む中年男サンヒョンと、いわゆる“赤ちゃんポスト”が設置された福祉施設で働く児童養護施設出身のドンスには“裏の顔”があった。2人は“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を横取りし、子供を欲しがる家庭に高額の手数料と交換に引き渡すというプローカー稼業で収入を得ていた。しかも、サンヒョンはヤバい筋からの借金がけっこうあり、その返済のためにもブローカーの仕事はやめられない。
ある日、2人は若い女ソヨンがポストに預けた赤ん坊を連れ去るが、翌日思い直して戻ってきたソヨンに問い詰められ、仕方なく2人は彼女と一緒に里親を探す旅に出る。一方、彼らを現行犯で逮捕しようと監視している2人の刑事は、尾行を開始する。
サンヒョンがカネに困っていることは分かるのだが、どうしてブローカーの仕事を選んだのかハッキリしない。実は彼には“家庭の事情”というものがあったらしく、それが何の伏線も無しに終盤に表に出てくるのは愉快になれない。ソヨンはある事件に巻き込まれているらしいのだが、華奢で若い女の身でそんな“犯行”に及ぶとは到底考えられない。また、ドンスが犯罪に手を染める動機付けも弱い。もっと切迫した事情を持ってくるべきだった。
さらに言えば、刑事たちの存在は果たして必要だったのか疑問だ。警察の捜査をモチーフとして採用するのならば扱いを強固にするのが当然ながら、ここではそれが成されていない。ロードムービーとしての興趣もほとんど出ておらず、せいぜい途中で“闖入者”が加わるぐらいで、工夫が足りない。ラストの扱いに至っては、いったい何が解決したのか分からないし、各キャラクターの去就も明確ではない。
是枝裕和の演出は平板で、これといった盛り上がりは見当たらない。主演のソン・ガンホは相変わらず達者な演技だが、彼にしてみれば今回は“軽くこなした”という程度だろう。カン・ドンウォンにペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨンといったキャストは悪くはないパフォーマンスを見せるが、殊更優れたものでもない。是枝監督は次回はどこで撮るのか分からないが(Netflixでの仕事になるという話もある)、いずれにしろ正攻法で取り組んでほしい。