(原題:THE BATMAN)バットマンが出てくる映画を全部観ているわけではないが、今までは感心するような出来の作品はひとつも無かった。だから本作もさほど期待せずに接したのだが、意外にも面白い。約3時間もの尺を、まったくダレることなく見せきっている。これはひとえに、脚本のクォリティに尽きる。ヒーロー物だろうが何だろうが、話の辻褄を合わせることの重要性は、ジャンルに関係なく映画にとって普遍的な命題であることを改めて実感した。
両親を殺された過去を持つブルース・ウェインが、バットマンとしてゴッサム・シティに蔓延る社会悪に立ち向かうことを決心して間もない頃の話で、今回の相手は権力者を標的とした連続殺人事件を起こしている怪人リドラーだ。狡猾な知能犯であるリドラーは、犯行現場に必ず“なぞなぞ”を残す。それは単なる挑発ではなく、犯行の背景にあるゴッサム市の暗部をも照射している。ブルースはそれに対峙すると同時に、亡き父と市の幹部らが関与していた重大な過失と犯罪を見せつけられるハメになる。
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とにかく、バットマンが警察と共に犯行現場に赴き、検証までやるという設定には驚くしかない。また刑務所や拘置所にも足を運んで容疑者から聞き取りをおこない、事件の内実を推理するという段取りにもびっくりだ。つまりはこの映画、理詰めに展開するのである。もちろん、プロットの組み立て方には本格ミステリー映画に比べれば少し甘いかもしれないが、今までのバットマン映画みたいに主人公が俺様主義で“無理を通せば道理が引っ込む”とばかりに実力行使に及ぶ筋書きとは、完全に趣を異にしている。
そして本作におけるブルースは若く、正攻法で事を収めようとしている姿勢を崩さないのも大きい。スーパーヒーローではなく、まるで探偵のような役回りだ。もちろん、このシリーズらしい派手なアクション描写は健在で、怪人ペンギンとのカーチェイスや、ラスト近くの賑々しい銃撃戦などはけっこう盛り上がる。
しかし、キャットウーマンことセリーナ・カイルとの出会いや、マフィアのボスであるカーマイン・ファルコーネの扱いなど、主人公を取り巻く人間関係は丁寧に綴られており、ドラマが大味になるのを巧みに回避しているのは評価して良い。マット・リーヴスの演出はテンポが良く、バットマンの知名度(?)に寄りかかること無く、マジメにストーリーを追っているのは好印象。
主演のロバート・パティンソンは歴代のバットマン役者の中でも随一の二枚目で、これは彼の新たなキャリアになりそうだ。ゾーイ・クラヴィッツ(ミュージシャンのレニー・クラヴィッツの娘であることを最近知った)やジェフリー・ライト、ポール・ダノ、コリン・ファレル、ジョン・タトゥーロなどの面子もサマになっている。次回は終盤で存在が暗示されたジョーカーとの対決になると思うが、評判が良ければ観るつもりである。
両親を殺された過去を持つブルース・ウェインが、バットマンとしてゴッサム・シティに蔓延る社会悪に立ち向かうことを決心して間もない頃の話で、今回の相手は権力者を標的とした連続殺人事件を起こしている怪人リドラーだ。狡猾な知能犯であるリドラーは、犯行現場に必ず“なぞなぞ”を残す。それは単なる挑発ではなく、犯行の背景にあるゴッサム市の暗部をも照射している。ブルースはそれに対峙すると同時に、亡き父と市の幹部らが関与していた重大な過失と犯罪を見せつけられるハメになる。

とにかく、バットマンが警察と共に犯行現場に赴き、検証までやるという設定には驚くしかない。また刑務所や拘置所にも足を運んで容疑者から聞き取りをおこない、事件の内実を推理するという段取りにもびっくりだ。つまりはこの映画、理詰めに展開するのである。もちろん、プロットの組み立て方には本格ミステリー映画に比べれば少し甘いかもしれないが、今までのバットマン映画みたいに主人公が俺様主義で“無理を通せば道理が引っ込む”とばかりに実力行使に及ぶ筋書きとは、完全に趣を異にしている。
そして本作におけるブルースは若く、正攻法で事を収めようとしている姿勢を崩さないのも大きい。スーパーヒーローではなく、まるで探偵のような役回りだ。もちろん、このシリーズらしい派手なアクション描写は健在で、怪人ペンギンとのカーチェイスや、ラスト近くの賑々しい銃撃戦などはけっこう盛り上がる。
しかし、キャットウーマンことセリーナ・カイルとの出会いや、マフィアのボスであるカーマイン・ファルコーネの扱いなど、主人公を取り巻く人間関係は丁寧に綴られており、ドラマが大味になるのを巧みに回避しているのは評価して良い。マット・リーヴスの演出はテンポが良く、バットマンの知名度(?)に寄りかかること無く、マジメにストーリーを追っているのは好印象。
主演のロバート・パティンソンは歴代のバットマン役者の中でも随一の二枚目で、これは彼の新たなキャリアになりそうだ。ゾーイ・クラヴィッツ(ミュージシャンのレニー・クラヴィッツの娘であることを最近知った)やジェフリー・ライト、ポール・ダノ、コリン・ファレル、ジョン・タトゥーロなどの面子もサマになっている。次回は終盤で存在が暗示されたジョーカーとの対決になると思うが、評判が良ければ観るつもりである。