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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「第19回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

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 スコットランド中南部ラナークシャ―地域に本社を置くFYNE AUDIO社は、2017年創業の新興スピーカーメーカー。注目すべきはその開発スタッフの中に、元TANNOY社のチーフ・ディレクターがいることだ。英国TANNOY社のスピーカーといえば、米国JBL社と共に古くから高級舶来品の代名詞であった。しかしながら近年は多彩な輸入製品に押され、独特の音色を好む一部のファンだけのブランドになった感がある。その意味で、TANNOYを“卒業”したエンジニアがどういう音作りをしたのか、とても興味があった。

 試聴できたのは、小型スピーカーのF500。ピアノグロス仕上げのバージョンで価格は23万円という、このフェアでは場違いなほど安価なモデルだ(笑)。高さが30センチ強のブックシェルフ・タイプだが、作りは高級感がある。しかも、本国生産だ。同軸2ウェイというユニットはTANNOYのモデルと通じるものがあるが、音の出方はかなり違う。



 かなり密度が高いサウンドだ。高音から低音まで、キッチリと出ている。特筆すべきは低域の豊かさで、サイズを感じさせないほどスケールの大きな展開が見られる。音色は明るいが、強いクセは無く、幅広いジャンルをこなせそうだ。少なくともTANNOYとはまったく異なるコンセプトで、誰にでも奨められる。そして何といっても、犯罪的なほど高いプライスタグが付いていないのは良心的だ。

 協同電子エンジニアリングが展開するPhasemationブランドは、フォノアンプの分野では定評があり、私もそのエントリークラスの製品を愛用しているが、このフェアではフォノ・イコライザーの聴き比べという面白い試みを披露していた。なお、フォノアンプというのはレコード再生に欠かせないアタッチメントで、昔はアンプに内蔵しているのが常だったが、近年は独立したコンポーネントとして幅広く認知されている。

 同社の各価格帯の製品によって音がどれほど違うのかをデモしていたが、これがまあ驚くほど差が大きい。システム自体のグレードが完全に異なって聴こえるほどの激変ぶりだ。やはり、構成物によってサウンドが千変万化するというのがアナログの醍醐味なのだろう。この趣味性の高さは、デジタル音源とはひと味もふた味も違っており、廃れることは無いと確信できる。



 今回のフェアは前回同様、出品数が少ないのが気になったところだが、早くコロナ禍より前の状態に戻って欲しいことを願ってやまない。あとひとつ注文を付けるならば、福岡国際会議場は交通の便が悪いので、もっと駅に近い場所でやってほしい。そういえば、昔は別のオーディオフェアが福岡市中央区の天神地区で開催されていたが、そういうのが好ましい。

 蛇足だが、会場の近くにある長崎県対馬市のアンテナショップで今回も“お土産”を購入した(笑)。“対馬とんちゃん”と呼ばれる、醤油や味噌などをベースにした甘辛の焼肉ダレに漬けこんだ豚肉である。これが実に美味い。ご飯もビールも進む進む。対馬は海産物も豊富なので、次はそっち方面の食材を入手したいと思う。

(この項おわり)

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