去る3月25日から27日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきた。昨年(2021年)に引き続きコロナ禍が完全に収束していない時期にも関わらず、あえて実施してくれたのは評価したい。もちろん、コロナ禍前の賑やかさは戻ってはいないが、普段接することの出来ない機器を紹介してくれるだけでも有意義である。
印象に残ったモデルを挙げたいが、まずインパクトが強かったのは、フランスのAudioNec社のスピーカー、EVO lineである。デモ機として実装されていたのは二番目に値段の安いEVO 2だが、それでも約600万円という超高額商品だ。しかしながら、その音は思わず耳を傾けてしまうほど清新で魅力的である。
当製品の音の傾向を決定付けているのが、400Hzから20kHzまでの帯域再生を受け持つドライバーユニットである。特殊素材の振動板によるこのコンポーネントは、360度の指向性を持つ。したがって、音場は広大だ。特に横方向にどこまでも展開するサウンド空間の創出には舌を巻いた。音色はフランス製品らしい(?)蠱惑的な色気を含みつつ、圧倒的に明るいクリアネスを達成。もちろんジャンルを選ばない。このブランドは日本初上陸ということだが、これよりもっと高価なClassic lineというシリーズもあり、そっちの方も聴いてみたいものだ(もちろん、ほとんどの消費者には買えないのだが ^^;)。
ドイツのFink teamも昨年日本に紹介されたばかりのスピーカーブランドだ。聴けたのは、KIM(キーム)というモデルである。形状は昔懐かしい大型ブックシェルフで、見た目は80年代に日本で一世を風靡した“598スピーカー”にも通じるところがあるが、値段は約180万円と、おいそれと手を出せないプライスタグが付いている。
このスピーカーの音色は独特だ。例えて言うと“スモーキー”なのである。少しくすんだような、ソウルフルな(?)サウンドが楽しめる。透明度や解像度を追求したような音作りではなく、味わい深いテイストでリスナーを引き込もうという方向性が感じられる。もちろん、作り手たちは“ナチュラルなサウンドを提供した”という自負があるのだろうが、個人的にはキャラクターの濃い製品だと思った。この個性はジャズ系にマッチする。ただし、ジャズに特化したような米国JBL社の製品とは違い、独自の語り口で幅広いジャンルを網羅してくれそうだ。
Wilson Audioといえば、74年に創設されたアメリカの著名なハイエンド大型スピーカーの作り手で、私も試聴会などで何度か接してその繊細かつ恰幅の良い音に感心したものだ。ところが今回同社は珍しくミニサイズのモデルを出してきた。それがTune Totである。高さが38cmほどの可愛い小型ブックシェルフだが、価格の方は188万円と、全然可愛くない(笑)。
とはいえ小さいながら、しっかりとこのブランドの音を出すのは大したものだ。明るく屈託の無い鳴り方ながら、聴感上の物理特性はかなり詰められており、何を聴いても破綻することはない。低域のスケール感はサイズを考えれば随分と健闘しているし、堅牢な中高域は立体的なサウンドステージを再現している。この寸法のモデルを代表するハイ・クォリティの製品だと言えそうだ。
(この項つづく)
印象に残ったモデルを挙げたいが、まずインパクトが強かったのは、フランスのAudioNec社のスピーカー、EVO lineである。デモ機として実装されていたのは二番目に値段の安いEVO 2だが、それでも約600万円という超高額商品だ。しかしながら、その音は思わず耳を傾けてしまうほど清新で魅力的である。
当製品の音の傾向を決定付けているのが、400Hzから20kHzまでの帯域再生を受け持つドライバーユニットである。特殊素材の振動板によるこのコンポーネントは、360度の指向性を持つ。したがって、音場は広大だ。特に横方向にどこまでも展開するサウンド空間の創出には舌を巻いた。音色はフランス製品らしい(?)蠱惑的な色気を含みつつ、圧倒的に明るいクリアネスを達成。もちろんジャンルを選ばない。このブランドは日本初上陸ということだが、これよりもっと高価なClassic lineというシリーズもあり、そっちの方も聴いてみたいものだ(もちろん、ほとんどの消費者には買えないのだが ^^;)。
ドイツのFink teamも昨年日本に紹介されたばかりのスピーカーブランドだ。聴けたのは、KIM(キーム)というモデルである。形状は昔懐かしい大型ブックシェルフで、見た目は80年代に日本で一世を風靡した“598スピーカー”にも通じるところがあるが、値段は約180万円と、おいそれと手を出せないプライスタグが付いている。
このスピーカーの音色は独特だ。例えて言うと“スモーキー”なのである。少しくすんだような、ソウルフルな(?)サウンドが楽しめる。透明度や解像度を追求したような音作りではなく、味わい深いテイストでリスナーを引き込もうという方向性が感じられる。もちろん、作り手たちは“ナチュラルなサウンドを提供した”という自負があるのだろうが、個人的にはキャラクターの濃い製品だと思った。この個性はジャズ系にマッチする。ただし、ジャズに特化したような米国JBL社の製品とは違い、独自の語り口で幅広いジャンルを網羅してくれそうだ。
Wilson Audioといえば、74年に創設されたアメリカの著名なハイエンド大型スピーカーの作り手で、私も試聴会などで何度か接してその繊細かつ恰幅の良い音に感心したものだ。ところが今回同社は珍しくミニサイズのモデルを出してきた。それがTune Totである。高さが38cmほどの可愛い小型ブックシェルフだが、価格の方は188万円と、全然可愛くない(笑)。
とはいえ小さいながら、しっかりとこのブランドの音を出すのは大したものだ。明るく屈託の無い鳴り方ながら、聴感上の物理特性はかなり詰められており、何を聴いても破綻することはない。低域のスケール感はサイズを考えれば随分と健闘しているし、堅牢な中高域は立体的なサウンドステージを再現している。この寸法のモデルを代表するハイ・クォリティの製品だと言えそうだ。
(この項つづく)