近頃よく聴いているのが、イギリスの若手女性シンガー・ソング・ライター、ガブリエル・アプリンのデビュー・アルバム「イングリッシュ・レイン」である。アプリンは92年生まれという若さで、容姿はアイドル歌手並みに可愛い(笑)。しかし、シングルカット曲が全英第一位を獲得したように、評価されているのはルックスではなく楽曲の内容の方である。
向こう受けを狙ったような派手な曲調は見当たらず、クセのない声で基本的にオーソドックスでアコースティックな路線をキープしているが、サラリと聴き流せるほど“軽い”タッチではない。ブルース・スプリングスティーンやケイティ・ペリー等のアメリカのシンガーの曲を聴いて育ったらしいが、出来た曲はどれも陰影が濃く、深みがある。まさに英国のサウンドだ。
フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのナンバーをカバーした「パワー・オブ・ラヴ」も素晴らしい出来だが、オリジナル曲の質的水準はすべて高いポジションを維持しており、捨て曲がない。清涼な中にもインディ系ロックのパワフルさを感じることもあって、アルバム通して聴いても弛緩したところは見当たらない。女性ヴォーカル好きには買って損のないディスクだと思う。
2001年にシカゴの郊外ウィルメットで結成された4人組、フォール・アウト・ボーイの5枚目のアルバム「セイヴ・ロックンロール FOBのロックンロール宣言!」は、ポップ・パンクの快打である。
セールス面では成功したバンドだが、今まで個人的には好きなタイプのサウンドではなかった。曲想にスカスカしたところがあり、これを独特の味として楽しめるファンも大勢いることは分かるが、私にはどうにも受け付けないスタイルであった。ところがこの新譜では、曲の作りがかなりタイトになっており、メロディ展開もポップで幅広い層にアピール出来る仕上がりになっている。
エルトン・ジョンとの共演曲や、ケレン味たっぷりのアレンジが施してあるナンバーもあり、ヴァラエティがあって飽きさせない。このグループはここ数年活動を休止していたのだが、それが良い意味での“充電期間”になったようで、一皮剥けたような勢いを感じさせる。全米一位になったのも納得だ。しかし、録音はかなり悪い(昨今のJ−POPのディスクと変わらない低音質だ)。そのあたりが改善されていたら、満点の出来である。
2007年に、惜しまれつつ約30年間の演奏活動に終止符を打ったドイツの古楽器アンサンブル、ムジカ・アンティクヮ・ケルンが77年に独アルヒーフ・レーベルで吹き込んだ「ナポリのブロックフレーテ協奏曲集」は長らくカタログから消えていたが、最近復刻盤がリリースされたので買い求めた。
題名通り17紀から18世紀にかけてのナポリ出身の作曲家によるナンバーを集めたものだが、馴染みのない曲ばかりながら颯爽とした演奏でなかなかに聴かせてくれる。もちろん、ムジカ・アンティクヮ・ケルンのパフォーマンス能力がハイレベルであり、無名のナンバーでも鑑賞に耐えうるような次元に引き上げていることも大きいと思う。
特筆すべきは録音だ。ブロックフレーテとは縦笛(リコーダー)のことだが、ソロ楽器がオン気味で捉えられており、同時にバックの演奏との距離感は的確に表現されている。音像は鮮明かつ温度感があり、聴き疲れしない。往年の名オーディオ評論家・長岡鉄男の著書「外盤A級セレクション」の中でも紹介された優秀録音である。タワーレコード・ヴィンテージ・コレクションの一枚として千円で買えるのも有り難い。バロック音楽ファンならば要チェックのCDである。
向こう受けを狙ったような派手な曲調は見当たらず、クセのない声で基本的にオーソドックスでアコースティックな路線をキープしているが、サラリと聴き流せるほど“軽い”タッチではない。ブルース・スプリングスティーンやケイティ・ペリー等のアメリカのシンガーの曲を聴いて育ったらしいが、出来た曲はどれも陰影が濃く、深みがある。まさに英国のサウンドだ。
フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのナンバーをカバーした「パワー・オブ・ラヴ」も素晴らしい出来だが、オリジナル曲の質的水準はすべて高いポジションを維持しており、捨て曲がない。清涼な中にもインディ系ロックのパワフルさを感じることもあって、アルバム通して聴いても弛緩したところは見当たらない。女性ヴォーカル好きには買って損のないディスクだと思う。
2001年にシカゴの郊外ウィルメットで結成された4人組、フォール・アウト・ボーイの5枚目のアルバム「セイヴ・ロックンロール FOBのロックンロール宣言!」は、ポップ・パンクの快打である。
セールス面では成功したバンドだが、今まで個人的には好きなタイプのサウンドではなかった。曲想にスカスカしたところがあり、これを独特の味として楽しめるファンも大勢いることは分かるが、私にはどうにも受け付けないスタイルであった。ところがこの新譜では、曲の作りがかなりタイトになっており、メロディ展開もポップで幅広い層にアピール出来る仕上がりになっている。
エルトン・ジョンとの共演曲や、ケレン味たっぷりのアレンジが施してあるナンバーもあり、ヴァラエティがあって飽きさせない。このグループはここ数年活動を休止していたのだが、それが良い意味での“充電期間”になったようで、一皮剥けたような勢いを感じさせる。全米一位になったのも納得だ。しかし、録音はかなり悪い(昨今のJ−POPのディスクと変わらない低音質だ)。そのあたりが改善されていたら、満点の出来である。
2007年に、惜しまれつつ約30年間の演奏活動に終止符を打ったドイツの古楽器アンサンブル、ムジカ・アンティクヮ・ケルンが77年に独アルヒーフ・レーベルで吹き込んだ「ナポリのブロックフレーテ協奏曲集」は長らくカタログから消えていたが、最近復刻盤がリリースされたので買い求めた。
題名通り17紀から18世紀にかけてのナポリ出身の作曲家によるナンバーを集めたものだが、馴染みのない曲ばかりながら颯爽とした演奏でなかなかに聴かせてくれる。もちろん、ムジカ・アンティクヮ・ケルンのパフォーマンス能力がハイレベルであり、無名のナンバーでも鑑賞に耐えうるような次元に引き上げていることも大きいと思う。
特筆すべきは録音だ。ブロックフレーテとは縦笛(リコーダー)のことだが、ソロ楽器がオン気味で捉えられており、同時にバックの演奏との距離感は的確に表現されている。音像は鮮明かつ温度感があり、聴き疲れしない。往年の名オーディオ評論家・長岡鉄男の著書「外盤A級セレクション」の中でも紹介された優秀録音である。タワーレコード・ヴィンテージ・コレクションの一枚として千円で買えるのも有り難い。バロック音楽ファンならば要チェックのCDである。