(原題:End of Watch)アメリカ犯罪事情の現状報告という意味では、とても価値のある作品だ。この映画は純然たるフィクションではなく、実際に起きたいくつかの事件を元に物語が構成されている。アメリカにおける犯罪件数は一頃よりも減ったとも言われているが、本作を観る限りそうは思えない。
全米屈指の犯罪多発地区であるロスアンジェルスのサウス・セントラル地区で勤務する二人の警官が主人公だ。白人のテイラーとメキシコ系のザヴァラは、人種は違うが強い絆で結ばれた相棒同士だ。彼らは積極果敢な捜査により数々の手柄を立て、時には燃え上がる家の中から子供を救出するなど、警察官の職務を超えた活躍により表彰状までもらっている。
ある日、警察に“年老いた母親と連絡が付かないので、様子を見てきて欲しい”という要望があり、パトロール中の二人にその役割が振られる。ところが現場に赴いてみると、複数の死体と麻薬がぎっしり詰まった段ボールの山を発見。大掛かりな組織犯罪が明るみに出ることになる。これに対し麻薬を押収され怒り心頭のメキシコ系マフィアは、地元のギャングにテイラーとザヴァラの抹殺を指令。ロスの下町に血で血を洗うバトルが勃発する。
映画は主人公の自画撮り映像を中心に展開する。これはテイラーがユーチューバー(動画サイト投稿マニア)という設定によるのだが、これが臨場感を高めている。通常、こういう“似非ドキュメンタリー”を狙った作品はキワモノが多いのだが、この映画は題材のリアリティと作者の正攻法のアプローチにより、安っぽさは微塵もない。
面白いのは、主人公の二人はいわゆる悪徳警官ではなく、それどころか彼らの同僚も上司も揃ってマトモな人間であり、自分達からトラブルを呼び込むタイプではないことだ。
アメリカの警察官イコール(程度の差はあれ)悪に手を染めている連中という、犯罪ドラマに付き物のフィクショナルな構図は皆無。考えてみれば、最初からよからぬことを考えて警察に入る者がいるとは思えない。本作に描かれた警官の日常こそが現実を再現しているのだ。ギャングどもは相手が警官だろうと何だろうと平気で銃を向けてくる。
警察官はまさに危険と隣り合わせの日々を送っているのだが、それと対比して二人のオフタイムは屈託のないものだ。テイラーは結婚間近、ザヴァラは大家族に囲まれて幸せそうである。だからこそ、警官はこういった市民の日常を守るために職務に邁進出来るのだ。
デイヴィッド・エアーの演出はキレ味が鋭く、実際にサウスセントラルでロケしたという事実も相まって、かなりの求心力を発揮。主演のジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャの役作りは本格的なもので、実際にいそうなキャラクターをうまく表現している。テイラーの恋人に扮するアナ・ケンドリック(意外と巨乳 ^^;)も実に魅力的だ。現実感溢れるポリス・ストーリーとして、一見の価値はある。