(原題:We Were Soldiers)2002年作品。ベトナム戦争でアメリカ軍が多大な犠牲を出した戦いを描くランダル・ウォレス監督作だが、何とも八方美人的な作りでテーマが絞り込めていない印象を持った。
65年、米陸軍のハロルド・G・ムーア中佐率いる総勢約400名の部隊は、南ベトナム中央高地にある通称“死の谷”と呼ばれるベトコンの拠点に辿り着く。しかしそこには北ベトナム兵約2千人が待ち構えており、たちまち包囲されて苦戦を強いられる。戦闘は苛烈を極め、たまたま居合わせた特派員までも銃を持って戦うハメに。やがて現地の無差部爆撃によって終焉を迎えるも、ムーア中佐は最後まで奮戦する。
アメリカ製戦争映画にしては珍しく敵軍の事情などを大々的に織り込んではいるものの、通り一遍の描写であまり観客に迫ってこない。相手軍の言い分を聞くよりも、対象を米軍の最前線に限定し、切迫した戦場の真実をミクロ的に活写すべきではなかったか。
また、この映画では戦場のシーンより兵士の家族の不安に力点が置かれているが、それを強調するなら最初から戦闘場面を必要最小限に抑えるべきだった。
しかし、それでも死亡告知を家族が受け取ってゆくシークエンスにはぐっとくる。当局側の段取り不足からか、告知は普通のタクシー運転手が届けてゆくことになってしまう。この何とも配慮の足りない行為に戦争の無常さを象徴させたかったのかもしれない。
主演のメル・ギブソンは熱演だが、従来のパターンを逸脱するものではない。グレッグ・キニアやサム・エリオットらの脇の面子もイマイチ印象に残らない。そして何より、ロケ地が全然ベトナムらしくない(熱帯ジャングルではない)のが大いに気になった。