(原題:White House Down)ひょっとすると、ローランド・エメリッヒ監督作では一番出来が良いかもしれない(笑)。もっとも他の作品がいずれも大味でスカスカであるため、一般世間的な比較基準としては低レベルなのだが、それでも彼の過去の諸作よりは観賞に耐えうる出来になっている。少なくとも、本作を観た後に仲間内で“ツッコミ大会”が開催されるような雰囲気ではない(爆)。
警察官のジョンはホワイトハウスで行われたシークレットサービスの採用試験に臨んだものの、過去の素行が問題になり不合格となってしまう。失意の彼は、気晴らしも兼ねて小学生の娘とホワイトハウスの見学ツアーに参加。だが、そこに謎の武装集団が乱入し、ホワイトハウスは占拠されてしまう。運良く悪者達の監視から逃れたジョンは、官邸内で孤立した大統領と共に徒手空拳で立ち向かう。
一番の勝因は、主人公達の活躍の舞台をホワイトハウス内に限定していること。過去のエメリッヒ作品は「デイ・アフター・トゥモロー」といい「2012」といい、ワールドワイドな設定で大風呂敷を広げようとして失敗する例が目立っていたが、本作のように狭い世界に押し込んでしまえば、いわば“薄いスープも煮詰まれば濃くなる”という案配でアラが目立たない。
言うまでもなくこれは「ダイ・ハード」の路線を狙っているが、あの映画ほどの緻密な脚本は用意されてはいない。たとえば犯人グループのハッカーが理由も無く勝手に“自爆”してしまう等の不手際も目立つ。しかし、似たようなネタの「エンド・オブ・ホワイトハウス」みたいな行き当たりばったりの展開は、比較的抑えられていると言える。
主人公は何度も絶体絶命のピンチに陥るが、行動する前にちゃんと自分の頭で考えている(ように見える)。スティーヴン・セガールのエピゴーネンみたいな「エンド・オブ・ホワイトハウス」の脳天気な元シークレットサービスの“(無意味な)活躍”を延々と見せられることもない。
また敵役の設定も、過去の戦争で当局側から見捨てられたり身内を失ったりして政府を憎んでいる者達というのは悪くない。映画の前半だけ観れば事件の黒幕は(お馴染みの)軍産複合体であることは誰でも分かるのだが、いたずらに奇を衒った設定よりも“ありがちな御膳立て”を選択したというのは冷静な判断だ。小ネタとしてYouTubeが活用されているのは面白く、主人公の娘が“ブログなんて死語だね”などと言うのも苦笑させられる。
主役のチャニング・テイタム、大統領に扮したジェイミー・フォックス、共に好調。有能なキャリアウーマンを演じるマギー・ギレンホールも的確な仕事ぶりだ。それにしても、ホワイトハウスがぶっ壊される映画が2本続けて公開されるというのは、(過去にもあったように)似たような天変地異映画が同じ時期に公開されるという事例よりも珍しい。ハリウッド人種達はワシントンに対して何か思うところでもあるのだろうか(笑)。