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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アイス・ロード」

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 (原題:THE ICE ROAD)突っ込みどころは少なくないが(笑)、パワフルな演出と主演俳優の存在感で最後まで見せきってしまう。昨今、肩の凝らない娯楽作品の分際でやたら長い尺を持つシャシンも多々ある中、これは2時間以内にキチッと収めているのも嬉しい。そこそこ大作感もあり、金を払って観て損しないだけのレベルはキープしている。

 カナダのダイヤモンド鉱山で爆発事故が起こり、作業員26人が地下に閉じ込められてしまう。坑内には可燃性のガスが充満しており、30トンもある排出装置を現場に運んで対処しなければならない。ところが、鉱山へは湖に張った80センチの氷の道を踏破する必要がある。一定のスピードで細心の注意を払いながら進まないと、氷が割れて水底に沈んでしまう。地下の酸素が尽きるのは約30時間後だ。訳ありのトラックドライバーであるマイク・マッキャンをはじめとする輸送スタッフの面々は、決死のミッションに挑む。



 明らかにアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「恐怖の報酬」(1953年)を意識した設定で、あの映画の脅威がトラックの荷台に満載のニトログリセリンであったのに対し、今回は薄すぎる氷が主人公たちの行く手を阻む。次々と襲いかかるトラブルは、良く考えると辻褄が合わない箇所が散見されるのだが、そこは勢いで乗り切ってしまう。

 実はこの事故の裏には別の陰謀が存在しており、途中からマイクたちを消そうとする連中が押し寄せるという展開になるのだが、果たしてそういうモチーフを挿入したことが正解だったのかは微妙なところである。単純に、道なき道を行くトラックと坑内の緊迫した状況を交互に映し出した方が効果的だったかもしれない。とはいえ、これは送り手のサービス精神の発露と捉えておこう。

 監督のジョナサン・ヘンズリーの仕事ぶりは力強く、ドラマが弛緩するようなことはない。アクション場面の扱いも及第点だ。そして何といっても主演のリーアム・ニーソンである。幾分総花的なストーリーをものともせず、俺様流の強引さで観る者を納得させてしまう。やっぱりこの個性は貴重だ。

 ローレンス・フィッシュバーンが早々に退場してしまうのは残念だが、ベンジャミン・ウォーカーやアンバー・ミッドサンダー、マーカス・トーマスといった他のメンバーが盛り上げる。トム・スターンのカメラによる、冷え冷えとしたカナダの自然の描写。マックス・アルジの音楽とカーラジオから流れるカントリーソングも効果的だ。

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