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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「青いドレスの女」

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 (原題:Devil in a Blue Dress )95年作品。正直言って、ミステリー映画としてはあまり上等ではない。展開はスピーディーではなく、活劇場面も大したことがない。しかしながら、エクステリアは上質だ。この優れた“外観”を堪能できるだけでも、存在価値はある。さらに、出ている面子も申し分ない。

 1948年のロスアンジェルス。真面目で教養はあるが運悪く仕事にありつけない黒人労働者イージー・ローリンズは、いきつけのバーの経営者ジョッピーの友人オルブライトから、大富豪カーターの婚約者で失踪中のダフネを探すように頼まれる。かなりヤバそうな案件であることは知りつつも、イージーは住宅ローンの返済のために、やむなく引き受ける。



 早速関係者からの聞き込みを開始したイージーだが、ダフネの友人のコレッタに接触した途端、なぜか嫌疑不明で逮捕されてしまう。どうやら、彼を陥れる陰謀が裏で進行していたらしい。何とか釈放されたイージーは、南部からやってきた旧友のマウスと共に、ダフネの捜索および黒幕とのバトルに身を投じていく。ウォルター・モズレイによる小説の映画化だ。

 当初からスクリーン上には胡散臭い連中が跳梁跋扈していることもあり、誰が一番悪いのかは、ほぼ予想がつく(笑)。終盤の展開は意外といえば意外な面もあるのだが、それほどのインパクトは無い。また、人種間の相克も描かれてはいるが、最近の映画のようにことさら強調はされていない。

 だが、本作の雰囲気は実に心惹かれるものがある。1940年代のノスタルジックなロスの街並み、タク・フジモトのカメラによるセピア調の色遣い。確かな時代考証に基づいた美術と大道具・小道具。主人公が足繁く通うバーの、タバコとバーボンの香りが匂ってくるような造形。まさしく往年のハードボイルド映画の御膳立てだ。加えて、エルマー・バーンスタインの音楽とバックに流れるジャズのスタンダード・ナンバーが場を盛り上げる。

 カール・フランクリンの演出自体は殊更アピールしてくるものは無いが、雰囲気を壊さないだけの配慮は成されている。主演のデンゼル・ワシントンの演技は手堅く、トム・サイズモアやメル・ウィンクラー、モーリー・チェイキン、そしてこの映画が出世作となったドン・チードルといった顔ぶれも悪くないだろう。また、ダフネに扮するジェニファー・ビールスが、自身の生い立ちを反映した役柄をこなしているのも興味深い。

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