世評は高いようだが、個人的にはとても評価出来ないシロモノだ。要するにこれは、無理筋の設定を限りなく積み上げて勝手に深刻ぶっているだけのシャシンである。さらに言えば、共感する登場人物がほとんどいない。もちろん、問題のある人間ばかりを集めてブラックなノリに持っていく手法もあり得るのだが、本作はどうも中途半端。特に終盤の腰砕けの展開には、タメ息しか出ない。
愛知県蒲郡市で小さなスーパーマーケットを経営する青柳直人は、ある日女子中学生が化粧品を万引きする現場を目撃する。彼女を事務所まで引っ張っていく直人だが、スキを突いて彼女は逃走。彼は追いかけるが、その途中で彼女は道を横断しようとして交通事故に遭い死亡する。女子中学生の父親の添田充は、娘の花音が死んだのは直人のせいだと断定し、執拗に彼を付け狙う。さらに、充の抗議の矛先は学校やマスコミにも向かい、事件を面白がるネット民も煽り立てる中、事態は思わぬ方向へと展開していく。
まず、スーパーの対応は明らかにおかしい。普通ならば防犯カメラの映像を見せて相手を問い詰めるところだが、予算の関係でカメラは設置していないという。そもそも、質問も無しにいきなり手首を掴んで事務所に連れ込み、相手に逃げられたら全力疾走で後を追うというのは、明らかに失態だろう。逃げた中学生も、交通量の多い道路に飛び出せばどうなるかは分かりそうなものだ。
充は漁師だが、絵に描いたようなパワハラ野郎で、とうの昔に女房には逃げられている。ところが、なぜか花音の親権は手に入れているのだ。別れた妻はメンタルに問題があったらしいが、だからといって、家裁が横暴な充に娘の面倒を見られると判断した理由は不明である。マスコミの描き方は酷いもので、いくらマスコミ人種が横着とはいえ、あんな配慮を欠いた取材が許されるわけが無いだろう。現実の話ならば、直ちに訴訟ものだ。
不思議なのは、この映画では当事者たちが右往左往するばかりで、警察その他の第三者がまるで介入してこないことだ。事故に関する刑事案件はどうなったのか、どうして誰も弁護士などの専門家の助言を得ようとしないのか、何も説明が無い。直人に何かとちょっかいを出すスーパーの女子従業員は鬱陶しく、充の“子分”である若造が、いくら邪険にされても充から離れようとしないのはおかしい。まさに“悲劇のための悲劇”というか、為にするような作劇の連続で、観ていて面倒くさくなってくる。
さらには痛々しい人物たちの跳梁跋扈をみせられた後、ラスト近くになるとガラリと作品のカラーが変わってくるのだから、呆れてものも言えない。吉田恵輔の演出は力があるとは言えるが、彼自身が担当した脚本がどうしようもないので、全体的に空回りしている。主演の古田新太と松坂桃李をはじめ、藤原季節に趣里、片岡礼子、寺島しのぶなど悪くない面子を揃えているだけに、何とも割り切れない気分だ。
愛知県蒲郡市で小さなスーパーマーケットを経営する青柳直人は、ある日女子中学生が化粧品を万引きする現場を目撃する。彼女を事務所まで引っ張っていく直人だが、スキを突いて彼女は逃走。彼は追いかけるが、その途中で彼女は道を横断しようとして交通事故に遭い死亡する。女子中学生の父親の添田充は、娘の花音が死んだのは直人のせいだと断定し、執拗に彼を付け狙う。さらに、充の抗議の矛先は学校やマスコミにも向かい、事件を面白がるネット民も煽り立てる中、事態は思わぬ方向へと展開していく。
まず、スーパーの対応は明らかにおかしい。普通ならば防犯カメラの映像を見せて相手を問い詰めるところだが、予算の関係でカメラは設置していないという。そもそも、質問も無しにいきなり手首を掴んで事務所に連れ込み、相手に逃げられたら全力疾走で後を追うというのは、明らかに失態だろう。逃げた中学生も、交通量の多い道路に飛び出せばどうなるかは分かりそうなものだ。
充は漁師だが、絵に描いたようなパワハラ野郎で、とうの昔に女房には逃げられている。ところが、なぜか花音の親権は手に入れているのだ。別れた妻はメンタルに問題があったらしいが、だからといって、家裁が横暴な充に娘の面倒を見られると判断した理由は不明である。マスコミの描き方は酷いもので、いくらマスコミ人種が横着とはいえ、あんな配慮を欠いた取材が許されるわけが無いだろう。現実の話ならば、直ちに訴訟ものだ。
不思議なのは、この映画では当事者たちが右往左往するばかりで、警察その他の第三者がまるで介入してこないことだ。事故に関する刑事案件はどうなったのか、どうして誰も弁護士などの専門家の助言を得ようとしないのか、何も説明が無い。直人に何かとちょっかいを出すスーパーの女子従業員は鬱陶しく、充の“子分”である若造が、いくら邪険にされても充から離れようとしないのはおかしい。まさに“悲劇のための悲劇”というか、為にするような作劇の連続で、観ていて面倒くさくなってくる。
さらには痛々しい人物たちの跳梁跋扈をみせられた後、ラスト近くになるとガラリと作品のカラーが変わってくるのだから、呆れてものも言えない。吉田恵輔の演出は力があるとは言えるが、彼自身が担当した脚本がどうしようもないので、全体的に空回りしている。主演の古田新太と松坂桃李をはじめ、藤原季節に趣里、片岡礼子、寺島しのぶなど悪くない面子を揃えているだけに、何とも割り切れない気分だ。