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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ワールド・ウォーZ」

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 (原題:World War Z )ゾンビどもが群れを成し、巨大な人柱を形成して高い建物を乗り越えようとする映像は凄い。そして、ゾンビ軍団から逃げ惑う群衆を俯瞰で映したショットもかなりのものだ(どこかの内戦のように見える)。さらにはゾンビが増殖する旅客機内からの脱出シーンも、キレがあって迫力満点である。しかし、それらを除けば大したことはないシャシンだ。

 妻子を連れてドライブ中であった元国連捜査官のジェリーは、突然フィラデルフィアの街中でゾンビの襲来に曝される。間一髪で難を逃れ、米軍の艦船に避難することが出来たジェリー達は、正体不明のゾンビ・ウイルスのアウトブレイクが世界的に発生して主要都市は既に壊滅していることを知る。かつての上司である国連事務次長のティエリーから“現場復帰”を要請されたジェリーは、解決策を求めて世界中を飛び回ることになる。

 おそらくはゾンビ映画史上最高の製作費が投じられた作品で、しかも堂々の夏休みシーズンでの公開だ。よって、従来のゾンビ映画のルーティン(?)は完全に無視されている。この手の映画に付き物の、派手なスプラッタ場面や粘り着くようなグロテスク描写は見当たらない。

 そもそも主演がブラッド・ピットである。今のところどう見ても“非・オタク系”の演技者である彼が、劇的な心変わりでもしない限り、B級テイストたっぷりの従来型ホラームービーなんかに出るはずもない。普通のゾンビ映画とは一線を画す、まさに“健全な”アドベンチャー作品と化している。

 行きかがり上は主人公に数多く修羅場を潜らせる必要があるのは分かるが、普通の勤め人とは異なる非現実的なタフネスを付与されているというのが、何とも腑に落ちない。いくら国連の有能な外回りスタッフだったといっても、ゾンビどもを難なく蹴散らし、飛行機が落ちても重傷を負っても数シークエンス後には平気の平左で復活するという筋書きはかなり無理がある。これはブラピではなくシュワ氏やスタローン御大の仕事ではないか(笑)。

 もっと“一般市民が非常事態に直面した”というシチュエーションを前面に出した方が切迫感が増したはずだ。ゾンビ・ウイルスに対する方策が発見される終盤の展開は、それまでの派手派手しい画面の連続とは打って変わった地味なもので、このあたりも気勢を削がれる。マーク・フォースターの演出は可も無く不可も無し。ブラピ以外のキャストは名前も知らないような者ばかりで、しかも演技面・存在感ともイマイチ。主人公に拮抗するようなキャラクターを有名俳優に演じさせても良かったのではないだろうか。

 なお、原作者のマックス・ブルックスはメル・ブルックスとアン・バンクロフトの間に出来た子だというのは驚いた。コメディ映画の巨匠の息子がホラー作家とは、そっちの事実の方が映画自体よりもインパクトがある。

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