(原題:DIVA)81年作品。リュック・ベッソンやレオス・カラックスと共に、80年代以降のフランス映画界を背負って立つと言われたジャン=ジャック・ベネックス監督のデビュー作にして、カルト映画の極北として知られる一本。実際、その頃のフランス作品としては抜群の面白さで、日本でも熱心な映画ファンの間で大いに話題になったものだ。
パリに住む18歳の郵便配達夫ジュールは、オートバイにもステレオを装着しているオーディオマニアで、特にオペラが大好きである。そんな彼が女神として崇めているのが黒人プリマドンナのシンシアで、のめり込むあまりコンサートを密かに録音してしまう。ところがシンシアは一切レコーディングしない主義なので、結果的に貴重品になったジュールの録音テープをめぐり、台湾で海賊盤を出そうとする悪徳レコード会社の手先に追われることになる。
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さらに、麻薬組織に狙われた女が駅で殺される寸前に機密事項を収めたテープをジュールのカバンに隠したため、彼は麻薬シンジケートの2人組の殺し屋に襲われるハメにもなってしまう。絶体絶命の彼を救ったのが、ベトナム人の少女アルバとその恋人ゴロディッシュだ。ジュールは彼らの助けを得ながら、シンシアと和解しようとする。
いわゆる“追われながら事件を解決する話”で、サスペンスの盛り上げ方は明らかにヒッチコックを意識している。そして、語り口はビリー・ワイルダーの影響が大きい。もちろん単なる物真似ではなく、自家薬籠中のものにしており、カー・アクションやエレベーターの穴に落ちるサスペンスを主体としたクライマックスの対決も鮮やかにこなしている。
クラシック音楽とロック・ミュージック、アンティーク趣味とブランド志向など、互いに相反する事象を上手く取りまとめた手法も面白い。ベネックスの演出は流麗で、終盤の伏線回収と鮮やかな幕切れには唸ってしまう。
ジュールを演じるフレデリック・アンドレイをはじめ、リシャール・ボーランジェにチュイ=アン・リュー、ロラン・ベルタン、ドミニク・ピノンといったキャストは皆良くやっている。そしてシンシアを演じるウィルヘルメニア・フェルナンデスは素晴らしい。容姿もさることながら、彼女が歌うカタラーニの歌劇「ラ・ワリー」のアリア「遠いところへ」は絶品で、まさにディーバ(女神)の風格だ。
ウラディミール・コスのオリジナル音楽と、フィリップ・ルースロによる撮影も文句なし。あと関係ないが、ジュールが使っていたカセットテープのブランドがNakamichiの“ZX”というマニア御用達のアイテムであったのにも驚いた。
パリに住む18歳の郵便配達夫ジュールは、オートバイにもステレオを装着しているオーディオマニアで、特にオペラが大好きである。そんな彼が女神として崇めているのが黒人プリマドンナのシンシアで、のめり込むあまりコンサートを密かに録音してしまう。ところがシンシアは一切レコーディングしない主義なので、結果的に貴重品になったジュールの録音テープをめぐり、台湾で海賊盤を出そうとする悪徳レコード会社の手先に追われることになる。

さらに、麻薬組織に狙われた女が駅で殺される寸前に機密事項を収めたテープをジュールのカバンに隠したため、彼は麻薬シンジケートの2人組の殺し屋に襲われるハメにもなってしまう。絶体絶命の彼を救ったのが、ベトナム人の少女アルバとその恋人ゴロディッシュだ。ジュールは彼らの助けを得ながら、シンシアと和解しようとする。
いわゆる“追われながら事件を解決する話”で、サスペンスの盛り上げ方は明らかにヒッチコックを意識している。そして、語り口はビリー・ワイルダーの影響が大きい。もちろん単なる物真似ではなく、自家薬籠中のものにしており、カー・アクションやエレベーターの穴に落ちるサスペンスを主体としたクライマックスの対決も鮮やかにこなしている。
クラシック音楽とロック・ミュージック、アンティーク趣味とブランド志向など、互いに相反する事象を上手く取りまとめた手法も面白い。ベネックスの演出は流麗で、終盤の伏線回収と鮮やかな幕切れには唸ってしまう。
ジュールを演じるフレデリック・アンドレイをはじめ、リシャール・ボーランジェにチュイ=アン・リュー、ロラン・ベルタン、ドミニク・ピノンといったキャストは皆良くやっている。そしてシンシアを演じるウィルヘルメニア・フェルナンデスは素晴らしい。容姿もさることながら、彼女が歌うカタラーニの歌劇「ラ・ワリー」のアリア「遠いところへ」は絶品で、まさにディーバ(女神)の風格だ。
ウラディミール・コスのオリジナル音楽と、フィリップ・ルースロによる撮影も文句なし。あと関係ないが、ジュールが使っていたカセットテープのブランドがNakamichiの“ZX”というマニア御用達のアイテムであったのにも驚いた。