いかにもSABU監督(脚本も担当)らしい、乱雑な筋書きと無手勝流の展開で、普通ならば駄作として片付けられても仕方が無いようなシャシンだが、キャストの熱演と作劇の妙なパワーによって何とか最後まで観ていられた。また、若年層向けの映画と割り切れば、それほど腹も立たない。
90年代前半の長野県の地方都市。母と二人暮らしの高校3年生の濱田清澄は、ある朝学校に遅刻し、すでに朝礼が始まっている体育館に走り込み、取り敢えず入り口近くの1年生の列の後ろに並ぶ。そこで彼は、皆にイジメられている女生徒・蔵本玻璃を見つける。清澄は思わず助けに入るが、玻璃は心を開かず奇声を発して彼を拒絶するのだった。しかし、その後ひょんなことから2人は距離を縮めることになる。ただ、玻璃には誰にも言えない秘密があるようで、それは彼女の父親が関係しているらしいことを清澄は突き止める。竹宮ゆゆこの同名小説の映画化だ。
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まず、玻璃が“学年一の嫌われ者”として疎まれている理由が分からない。当初、彼女には吃音があるのではないかと思ったが、落ち着いて喋れば別に違和感は無いし、それどころか独特のユーモアがあって面白い。玻璃の父親は問題人物として描かれるが、その行動規範は不明のままだし、最初は玻璃が懐いているように見えるのも変だ。
そもそも、清澄の心情がセリフとして出てくるのは不自然で、しかもそれが冗長。前半の玻璃とのやり取りも不必要に尺を取りすぎで、ここを大幅にカットすればもっとタイトな仕上がりになったはずだ。後半はサイコ・サスペンス風味になってくるが、要するにこれは“早く警察に通報しろよ”と突っ込んだら終わりのようなハナシだ。ラスト近くの扱いもいまひとつ釈然としない。
しかしながら、実はヒーローを目指している(らしい)清澄の頑張りには、けっこう引き込まれるものがある。特に“ヒーローは負けない。絶対に!”というスローガンにはグッときた。主演の中川大志と石井杏奈は好演。井之脇海や北村匠海、矢田亜希子、原田知世、堤真一といった面子も悪くない。そして最も印象的だったのが、玻璃の同級生に扮する清原果耶だ。彼女が出てくると画面が締まってくる。この若さでこれだけの貫禄を示すとは、末恐ろしい限りである。
90年代前半の長野県の地方都市。母と二人暮らしの高校3年生の濱田清澄は、ある朝学校に遅刻し、すでに朝礼が始まっている体育館に走り込み、取り敢えず入り口近くの1年生の列の後ろに並ぶ。そこで彼は、皆にイジメられている女生徒・蔵本玻璃を見つける。清澄は思わず助けに入るが、玻璃は心を開かず奇声を発して彼を拒絶するのだった。しかし、その後ひょんなことから2人は距離を縮めることになる。ただ、玻璃には誰にも言えない秘密があるようで、それは彼女の父親が関係しているらしいことを清澄は突き止める。竹宮ゆゆこの同名小説の映画化だ。

まず、玻璃が“学年一の嫌われ者”として疎まれている理由が分からない。当初、彼女には吃音があるのではないかと思ったが、落ち着いて喋れば別に違和感は無いし、それどころか独特のユーモアがあって面白い。玻璃の父親は問題人物として描かれるが、その行動規範は不明のままだし、最初は玻璃が懐いているように見えるのも変だ。
そもそも、清澄の心情がセリフとして出てくるのは不自然で、しかもそれが冗長。前半の玻璃とのやり取りも不必要に尺を取りすぎで、ここを大幅にカットすればもっとタイトな仕上がりになったはずだ。後半はサイコ・サスペンス風味になってくるが、要するにこれは“早く警察に通報しろよ”と突っ込んだら終わりのようなハナシだ。ラスト近くの扱いもいまひとつ釈然としない。
しかしながら、実はヒーローを目指している(らしい)清澄の頑張りには、けっこう引き込まれるものがある。特に“ヒーローは負けない。絶対に!”というスローガンにはグッときた。主演の中川大志と石井杏奈は好演。井之脇海や北村匠海、矢田亜希子、原田知世、堤真一といった面子も悪くない。そして最も印象的だったのが、玻璃の同級生に扮する清原果耶だ。彼女が出てくると画面が締まってくる。この若さでこれだけの貫禄を示すとは、末恐ろしい限りである。