深みには欠けるが、観ている間は退屈しないで楽しめる。描かれる題材は興味深いし、今風のモチーフも適度に取り入れられている。ドラマ運びのテンポは良く、キャストの仕事もおおむね的確だ。客の入りも悪くないし、全国一斉公開される邦画としては、常時この作劇レベルは保ってほしいものである。
長い歴史を誇る大手出版社“薫風社”の創業一族の社長が急逝。社内では跡継ぎの座をめぐって権力争いが勃発したが、社長の息子が海外の子会社に追いやられた結果、実権を握ったのは元専務の東松だった。彼は社長の椅子に座ると早速リストラ策を打ち出し、伝統のある“小説薫風”誌も不採算部門として整理しようとする。
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さらに東松は名物編集長の速水を、カルチャー誌“トリニティ”を担当させるために社外から招聘。速水は新企画を連発することにより、雑誌の立て直しを図る。“小説薫風”から“トリニティ”に異動になった若手社員の高野恵は、速水の強引なやり方に閉口しながらも何とか付いていく。そんな中、速水が連載を依頼したモデル兼作家の城島咲が不祥事を起こし、“トリニティ”は存亡の危機に陥る。塩田武士による同名小説の映画化だ。
タイトルや予告編で示されたような、観客を巧妙にだましてゆく“コンゲーム”のテイストは限りなく希薄で、展開はほぼ予想できる。その代わり、一般にはあまり知られていない(と言われているが、本当は皆薄々気付いている)出版業界の裏側が赤裸々に示されており、これがけっこう面白い。
文芸誌なんて大して売れていないのに作っている連中はプライドが高い、文学界の主要アワードは“裏工作”で決まる、カルチャー雑誌の内容は2つか3つのネタの使い回しである、大作家センセイはすぐに増長する、そもそも出版業界自体が斜陽産業であるetc.まるでブラック企業の内部告発みたいに容赦ない(笑)。
出版社の勢力争いなど、しょせんは“コップの中の嵐”である。だが、それでも出版に全精力を傾けている者たちも存在するわけで、映画はそれらを掬い上げる。恵の実家は街の小さな本屋だが、閉店寸前だ。恵はこの状況を何とかしたいと思っている。また、ネット配信に活路を見出す者もいる。守旧派も改革派も、書物というメディアを信じ切っている。そのあたりをポジティヴに扱っているのは、観ていて気持ちが良い。
吉田大八の演出は職人肌で、堅実にストーリーを進める。ギャグの振り出し方も申し分ない。速水役の大泉洋と恵に扮する松岡茉優は快調で、それぞれの持ち味が良く出た好演だ。宮沢氷魚に池田エライザ、中村倫也、佐野史郎、リリー・フランキー、國村隼、小林聡美、そして佐藤浩市と、他の面子もそれぞれキャラが立っている。
長い歴史を誇る大手出版社“薫風社”の創業一族の社長が急逝。社内では跡継ぎの座をめぐって権力争いが勃発したが、社長の息子が海外の子会社に追いやられた結果、実権を握ったのは元専務の東松だった。彼は社長の椅子に座ると早速リストラ策を打ち出し、伝統のある“小説薫風”誌も不採算部門として整理しようとする。

さらに東松は名物編集長の速水を、カルチャー誌“トリニティ”を担当させるために社外から招聘。速水は新企画を連発することにより、雑誌の立て直しを図る。“小説薫風”から“トリニティ”に異動になった若手社員の高野恵は、速水の強引なやり方に閉口しながらも何とか付いていく。そんな中、速水が連載を依頼したモデル兼作家の城島咲が不祥事を起こし、“トリニティ”は存亡の危機に陥る。塩田武士による同名小説の映画化だ。
タイトルや予告編で示されたような、観客を巧妙にだましてゆく“コンゲーム”のテイストは限りなく希薄で、展開はほぼ予想できる。その代わり、一般にはあまり知られていない(と言われているが、本当は皆薄々気付いている)出版業界の裏側が赤裸々に示されており、これがけっこう面白い。
文芸誌なんて大して売れていないのに作っている連中はプライドが高い、文学界の主要アワードは“裏工作”で決まる、カルチャー雑誌の内容は2つか3つのネタの使い回しである、大作家センセイはすぐに増長する、そもそも出版業界自体が斜陽産業であるetc.まるでブラック企業の内部告発みたいに容赦ない(笑)。
出版社の勢力争いなど、しょせんは“コップの中の嵐”である。だが、それでも出版に全精力を傾けている者たちも存在するわけで、映画はそれらを掬い上げる。恵の実家は街の小さな本屋だが、閉店寸前だ。恵はこの状況を何とかしたいと思っている。また、ネット配信に活路を見出す者もいる。守旧派も改革派も、書物というメディアを信じ切っている。そのあたりをポジティヴに扱っているのは、観ていて気持ちが良い。
吉田大八の演出は職人肌で、堅実にストーリーを進める。ギャグの振り出し方も申し分ない。速水役の大泉洋と恵に扮する松岡茉優は快調で、それぞれの持ち味が良く出た好演だ。宮沢氷魚に池田エライザ、中村倫也、佐野史郎、リリー・フランキー、國村隼、小林聡美、そして佐藤浩市と、他の面子もそれぞれキャラが立っている。