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「ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日」

 (原題:MIA ET LE LION BLANC)獰猛であるはずの雄ライオンが、人間の女の子に懐いている様子を映し出しただけで、これはもう十分に驚くべきことであり、劇場に足を運んだ甲斐があったと思わせる。しかも、3年以上の年月をかけて撮影を敢行し、少女とライオンとの関係性をドキュメンタリー・タッチで描いたというのだから、作者たちの努力には感服するしかない。

 野生動物を飼育するファームを経営するため、オーウェン家はロンドンから南アフリカに移住する。11歳のミアは仕事漬けの父とメンタルに問題がある兄の世話に掛かり切りになる母のもと、慣れない土地で寂しい思いをしていた。ある日、ファームにホワイトライオンが誕生し、ミアが世話をすることになる。チャーリーと名付けられたそのライオンと付き合ううちに、ミアは明るさを取り戻してゆく。3年後、ミアは父親が実はハンティング用に動物を売り捌いていたことを知り、ショックを受ける。彼女はチャーリーが売られる前に自然保護区に移そうと、チャーリーと共に家出する。

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 後半の、ミアとチャーリーとの逃避行は筋書きに無理がある。いくら何でも、成長したライオンを誰にも見つからずに目的地近くまで連れて行けるはずがない。だが、そこは“彼らがショッピングモールを強行突破する”という見せ場を用意することにより、何とか乗り切ってしまう。自然保護区間近のチェイス場面も悪くない。

 南アフリカでは、ハンターに動物を提供することが外貨獲得の有効な手段になっているという。この国はアフリカの中では比較的“開けている”と思うのだが、それでも斯様なことが横行しているということは、他の国々の状況はもっと酷いのだろう。改めてこの地域が置かれたシビアな状況を考えてしまう。

 ミア役のダニア・デ・ビラーズは好演で、チャーリーと一緒に成長する。CGなしの動物たちの描写も含めて、映画にリアリティを持たせている。父親役のラングレー・カークウッドも悪くないのだが、何といっても母親に扮するメラニー・ロランの美しさが目立っていた。監督のジル・ド・メストルはドキュメンタリー畑の出身だが、仕事ぶりは及第点には達している。ブレンダン・バーンズのカメラによるサバンナの風景は素晴らしい。

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