これは面白い。深刻なテーマを扱っていながら、アプローチに関してはフットワークが実に軽い。劇場内では笑いさえ起こったほどだ。また、そのライト感覚が素材の重要性をより浮き彫りにする。先日観た大島新監督の「なぜ君は総理大臣になれないのか」と並ぶ、政治ドキュメンタリーの快打だと思う。
有権者の中で自民党員の割合が日本一である富山県で放映業務をおこなうチューリップテレビは、89年設立の比較的新しいテレビ局だ。そこの記者とキャスターが、2016年に富山市議が政務活動費を不正受給していたことをスッパ抜く。その市議は議会を牛耳る自民党会派のドンと言われていた男で、最初は否認していたものの、やがて罪を認めて辞任。後に詐欺罪で逮捕される。
チューリップテレビは追及の手を緩めず、架空請求やカラ出張などの不正をはたらいていた議員たちを次々と告発。結果として半年の間に14人の市議が辞任するという、異常事態に発展する。そして富山市議会では、史上最も厳しいと言われる政務活動費の運用規定を設けるに至る。
とにかく、不正に手を染める議員たちの浅はかさに絶句する。彼らはちょっと調べればすぐ発覚するような、見え透いた小細工を弄して公金を掠め取ろうとする。テレビ局の取材に対して素直に不正を認める議員など、一人もいない。見苦しい言い訳やゴマカシに走った挙げ句、逃れられないと悟ると謝罪会見を開いて殊勝なところを見せたりする。この“否認、そして追求を受けての謝罪”というパターンが、延々と続く。
市議会の議長も辞めるハメになり、代わって任命された議長も、また辞任する。さらには、自民党議員を批判していた野党議員が“別件”で槍玉に挙げられる。ここまでくると、もはやギャグだ。もちろんこれらは笑い話ではなく憂うべき社会問題であるが、こんなにも不正が蔓延ると観ている側もマヒしてしまうのだ。
やがて、当初は告発された議員は辞めていたが、最近では不正をはたらいても開き直って議員職にしがみつく者が目立つようになる。そんなポンコツ議員を前にしても、有権者は“謝罪したのだから禊ぎは済んだ”とばかりに再選させてしまうのだ。斯様な現実を見ると、我が国には民主主義というものは全然根付いていないことを痛感する。終盤の、事件を追いかけてきた記者とキャスターの“その後”を描く段になると、こちらも慄然としてしまう。
チューリップテレビのスタッフでもある五百旗頭幸男と砂沢智史の演出は見上げたもので、テンポ良い作劇はもとより、カラスの大群が乱舞する市役所の情景を効果的に挿入させるなど、映像面での工夫も評価出来る。山根基世のナレーションも万全だ。なお、地方議会だけではなく政府ではケタの違う不正の疑惑が取り沙汰されているが、それを問題視する姿勢は、有権者にもマスコミにも見られない。何だが、日本全体が衰退の道を歩んでいるような気がする今日この頃である。
有権者の中で自民党員の割合が日本一である富山県で放映業務をおこなうチューリップテレビは、89年設立の比較的新しいテレビ局だ。そこの記者とキャスターが、2016年に富山市議が政務活動費を不正受給していたことをスッパ抜く。その市議は議会を牛耳る自民党会派のドンと言われていた男で、最初は否認していたものの、やがて罪を認めて辞任。後に詐欺罪で逮捕される。
チューリップテレビは追及の手を緩めず、架空請求やカラ出張などの不正をはたらいていた議員たちを次々と告発。結果として半年の間に14人の市議が辞任するという、異常事態に発展する。そして富山市議会では、史上最も厳しいと言われる政務活動費の運用規定を設けるに至る。
とにかく、不正に手を染める議員たちの浅はかさに絶句する。彼らはちょっと調べればすぐ発覚するような、見え透いた小細工を弄して公金を掠め取ろうとする。テレビ局の取材に対して素直に不正を認める議員など、一人もいない。見苦しい言い訳やゴマカシに走った挙げ句、逃れられないと悟ると謝罪会見を開いて殊勝なところを見せたりする。この“否認、そして追求を受けての謝罪”というパターンが、延々と続く。
市議会の議長も辞めるハメになり、代わって任命された議長も、また辞任する。さらには、自民党議員を批判していた野党議員が“別件”で槍玉に挙げられる。ここまでくると、もはやギャグだ。もちろんこれらは笑い話ではなく憂うべき社会問題であるが、こんなにも不正が蔓延ると観ている側もマヒしてしまうのだ。
やがて、当初は告発された議員は辞めていたが、最近では不正をはたらいても開き直って議員職にしがみつく者が目立つようになる。そんなポンコツ議員を前にしても、有権者は“謝罪したのだから禊ぎは済んだ”とばかりに再選させてしまうのだ。斯様な現実を見ると、我が国には民主主義というものは全然根付いていないことを痛感する。終盤の、事件を追いかけてきた記者とキャスターの“その後”を描く段になると、こちらも慄然としてしまう。
チューリップテレビのスタッフでもある五百旗頭幸男と砂沢智史の演出は見上げたもので、テンポ良い作劇はもとより、カラスの大群が乱舞する市役所の情景を効果的に挿入させるなど、映像面での工夫も評価出来る。山根基世のナレーションも万全だ。なお、地方議会だけではなく政府ではケタの違う不正の疑惑が取り沙汰されているが、それを問題視する姿勢は、有権者にもマスコミにも見られない。何だが、日本全体が衰退の道を歩んでいるような気がする今日この頃である。