(原題:THE SOCIAL DILEMMA)2020年9月よりNetflixにて配信されているドキュメンタリー映画。内容は題名の通りで、SNSがもたらす利点と共に、大きな問題点について言及している。そのアプローチには既視感があるし、ドラマ(フィクション)を挿入する方法もそれほど上手くいっているとは思えないが、深刻な事実の提示には改めて事態の深刻さを認識させられる。
まず、作品ではSNSのスポンサーにとって利用者とは“顧客”ではなく“商品”であることを指摘する。それはまあ、少しでもSNSのシステムを知っていれば“常識”なのだが、映画で明示されるとインパクトが強い。SNSの参加者はネットを自身のツールとして使っているつもりだろうが、実は個人の嗜好や考え方、および行動パターンなどは運営側に筒抜けであり、その情報はスポンサーに売り渡されて利用者を“誘導”するようなコンテンツを押し付ける。気が付けば、SNSを利用するつもりが運営側の手のひらで踊らされているだけという、笑えない状況に陥っている。
そしてSNSの利用者は“自身にとって都合の良い情報”ばかりを見せられた挙げ句、簡単にデマに引っ掛かる。結果として“事件”にまで発展したケースには、枚挙に暇が無い。また、SNSは利用者(特に若年層)を“内向き”にさせる。ネット社会の興隆に従って若者の自殺が増えていること、運転免許の取得数が減ってインドア派が目立っていることなどがデータとして示される。
映画ではSNSをスロットマシーンや違法薬物にまで例えられているが、その指摘があながち大げさだと思えないのが、劇中に多数登場する“元SNS関連会社の主要スタッフ”たちの証言の数々だ。彼らは一様に“過去の仕事から手を引いて正解だった”と言う。勤務時間中に利用者から情報を吸い上げるような職務に専念し、家に帰れば自身がその利用者としてSNSに弄ばれる。マトモな人間ならば、その欺瞞に気付くのが当然だ。
ジェフ・オーロースキーの演出は“再現ドラマ”の扱いこそ覚束ないが、概ね妥当な仕事ぶりだと思う。なお、私自身はフェイスブックだのツイッターだのといったシロモノには興味は無いが、本作を観ていると関心を持たなくて良かったと、つくづく思う。