(原題:PROJECT POWER )2020年8月よりNetflixにて配信された、SF(?)アクション編。設定は目新しくはないし、その設定自体も作劇に活かしているとは言い難い。予算が少ないのか、観たいと思っていた活劇場面は適当なところで切り上げられ、どうでも良いようなモチーフばかりが並べられる。まあ、尺があまり長くない(1時間41分)ことが救いだろうか。
ニューオーリンズの街に“パワー”と呼ばれる謎のドラッグが蔓延していた。そのドラッグを摂取すると、5分間だけ超人的な能力を発揮出来る。ただし、どんな能力なのかは服用してみないと分からず、運が悪ければ死に至る。娘を“パワー”を製造する組織に拉致された特殊部隊出身の元兵士アートは、売人の女子高生ロビンに接触して情報を入手。そこから組織の中枢に切り込もうとする。一方、ニューオーリンズ市警の刑事フランクは、多発する“パワー”服用者の犯罪を解決するため、自らも“パワー”を摂取して容疑者たちに立ち向かっていた。フランクは挙動不審なアートをマークするが、やがて共闘してアートの娘を救出しようとする。
こういう御膳立ての映画だと、観る方として期待するのは“超能力者同士の大々的なバトルシーン”である。しかし、本作ではそういう場面は少なく、しかも短時間でサッと切り上げられている。ドラッグの“効力”が5分間であるならば、せめて最低5分程度は引っ張ってもらいたいが、それも叶わない。しかも、超能力自体が激突するシーンはほとんどなく、片方が能力を披露するだけで終わる。これではカタルシスは生まれない。
そもそも、この“パワー”はいったいどこから来たのか。舞台が南部ルイジアナ州だから“原産国”は中南米ではないかと想像するが、それでも大都市圏をさしおいて地方都市で多数で出回っている理由が分からない。これほどの重大犯罪にもかかわらず、捜査に当たっているのがフランクだけというのは不可解だ(終盤にその理由らしいものが示されるが、あまり説得力がない)。
また、犯罪組織がアートの娘に目を付けた背景も説明されないばかりか、彼女の“能力”も取って付けたようである。さらに困ったのがロビンの造型。普通の女子学生があえて危険な橋を渡る必要はないと思うのだが、作者は“母親孝行したいから”の一言で片付けたいようだ。アリエル・シュルマンとヘンリー・ジューストによる演出はキレがなく、作劇は平板だ。
主演のジェイミー・フォックスとジョセフ・ゴードン=レヴィットは頑張ってはいたが、内容が斯様な状態なので、大して印象に残らない。ロビン役のドミニク・フィッシュバックに至っては、表情の乏しさを得意の(?)ラップでカバーしようとしている有様で愉快になれない。唯一褒めるべき点を挙げるならば、海が近くて市電が走るニューオーリンズの市内風景ぐらいである。