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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ペイン・アンド・グローリー」

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 (原題:DOLORY GLORIA )ペドロ・アルモドヴァル監督作品は「神経衰弱ぎりぎりの女たち」(88年)以外は肌に合わないことは分かっていたが、本作はカンヌ国際映画祭をはじめ世界中の主要アワードを席巻しているため、なかば“義務感”で劇場に足を運んだ次第。結果、やっぱりこの監督の映画は私の守備範囲外であることを認識しただけに終わり、我ながら呆れてしまった(苦笑)。

 映画監督のサルバドールはかつて数々の傑作をモノにした巨匠だが、今では持病の脊椎の痛みが悪化し、製作意欲も減退して無為の日々を送っていた。ある日、32年前に撮影したものの結局は“お蔵入り”になってしまった映画の上映許可依頼が彼のもとに届く。これを機に昔の主演俳優に会うなど、改めて自身の過去のキャリアを振り返るサルバドールだが、いつしか子供の頃の貧しいながらも楽しかった生活や、母との思い出に浸るのだった。



 話自体は圧倒的に(?)面白くない。オッサンの映画監督がかつての仕事仲間と会ったり、過去を思い出すだけだ。しかも、昔の主演俳優がドラッグでキメているのを見て、サルバドールは何となくヤクを始めてしまうという節操の無さ。そしてそのことが何のドラマも生み出さず、主人公はただウロウロするだけという、脱力するような展開が臆面も無く繰り広げられる。

 未公開に終わった映画に対し、サルバドールには何ら強い思い入れは感じられず、上映しようとする側にも、何ら作劇上の工夫が感じられない。ならば子供時代の思い出はどうかといえば、これまたまったく気勢が上がらない。文字通りの“思い出”をダラダラと綴っているだけで、盛り上がる箇所は皆無。あまりの退屈さに終始睡魔との戦いに明け暮れた。

 まあ、中には主人公が同性愛を意識したようなモチーフもあるのだが、別にドラマティックでも何でもなく、微温的に流れるだけだ。ラストの処理は観客の意表を突いたつもりだろうが、もはや“小賢しいギミック”としか思えない。

 主演のアントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、アシエル・エチェアンディア、レオナルド・スバラーリャといったキャストはまるで精彩に欠ける。特にバンデラスのパフォーマンスは、どうしてこれで第72回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞できたのかと思うほど凡庸である。強いて見どころを挙げるとすれば、この監督らしいカラフルな色遣いだろうか。ホセ・ルイス・アルカイネのカメラがとらえた、バレンシアの美しい風景も印象的だ。

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