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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「愛は至高のもの」

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 (英題:LOVE IS GOD )2003年インド作品。一般封切はされておらず、私は福岡市総合図書館にある映像ホール“シネラ”での特集上映にて鑑賞した。正直言って、作りや映像は古めかしい。しかしながら、キャストの的確な仕事ぶりとテーマの面白さにより、退屈せずに最後までスクリーンに対峙出来た。本国ではヒットしたというのも頷ける。

 CMディレクターのアンバラスは、自らの結婚式に間に合わせるため、地方での仕事先からチェンナイまでの飛行機に搭乗しようとする。しかし、悪天候のため欠航。空港で知り合ったのが、右半身が不自由ながら調子が良くおしゃべりなナンラシヴァムという男。彼の押しの強さに辟易するアンバラスだったが、やむなく泊まったホテルでナンラシヴァムと同室になるハメになり、ストレスは溜まる一方。2人は悪戦苦闘しながら、陸路でチェンナイを目指すことになる。



 物語の設定は、ジョン・ヒューズ監督の「大災難P.T.A.」(87年)からの借用であろう。しかし、ハートウォーミングなコメディであったあの作品とは違い、本作は喜劇的要素はほどほどに、社会派ネタを大幅に盛り込んでくる。

 ナンラシヴァムは労働運動のリーダーで、対する多国籍企業の社長は従業員の給料を安く抑えることによって不当な利益を得ていた。社長はあらゆる汚い手を使ってナンラシヴァム側を潰そうとするが、上手くいかない。そしてナンラシヴァムは社長の娘と恋仲になることにより、いよいよ攻勢を強めようとした矢先に交通事故で重傷を負ってしまったのであった。

 作品は貧富の差を固定させようという、昨今の経済的トレンドを糾弾している。また、随所に挿入される主人公の宗教観も興味深い。彼はシーク教やキリスト教の関係者と懇意にしているにも関わらず、一神教から距離を置いている。ナンラシヴァムは“神はどこにでもいる”と信じており、誰でも(善行を積めば)神になり得ると思っている。彼の信奉する共産主義と、多神教が微妙にマッチしているあたりが面白く、映画に訴求力を持たせている。

 スンダル・Cの演出は泥臭いが、観る者を引っ張るパワーはある。主演のカマルハーサンは“スーパースター”ラジニカーントの親友らしいが、こちらも圧倒的な存在感を発揮。アクション場面も楽々こなす。相手役のマーダヴァンもイイ味を出している。

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