(原題:THE SQUARE)つまらない。作品の狙いは分かる。しかし、仕掛けと段取りがあまりにも稚拙。典型的な“自己満足映画”である。一応、第70回カンヌ国際映画祭の大賞受賞作なのだが、有名アワードを獲得した映画が上質とは限らないというのが“定説”であることを、不本意ながら今回も再確認することになった。
ストックホルムにある現代アート美術館の学芸員であるクリスティアンは、順調にキャリアを重ねて各界有名人の知り合いも多い。次の展示会の企画は“ザ・スクエア”と銘打ったもので、地面に描かれた正方形によって平等の権利を謳うという参加型アートだ。さっそく彼は美術館の宣伝を担当する広告代理店と打ち合わせるが、代理店側はクリスティアンには内緒で突飛なプロモーションを企んでいた。
ある日、クリスティアンは街角で携帯電話と財布を盗まれてしまう。GPS機能を使って犯人の住むアパートを突き止めるが、相手を特定は出来ない。そこで全戸に脅迫めいたビラを配って犯人を炙り出すという作戦に打って出る。数日後に無事に盗まれた物は手元に戻るのだが、不用意に蒔いたビラのせいで住民とのトラブルを抱え込んでしまう。一方、広告代理店が行った無謀なPRが原因で美術館のホームページが“炎上”し、クリスティアンは謝罪会見を開くことを余儀なくされる。
要するに、鼻持ちならないインテリや、いい加減なギョーカイ関係者や、そしてコミュニケーション不全に陥っている世間一般の風潮などを、ブラックユーモア仕立てで笑い飛ばそうという魂胆である。だが、このやり方はよっぽど上手くやらないと、結局は笑い飛ばされる対象が作者自身になってしまうという“ブーメラン効果”がはたらいてしまうのだが、本作は見事にその轍を踏んでいるあたりが痛々しい。
クリスティアン自身の不遜でスノッブな態度をはじめ、チャラチャラした広告屋や、やたらうるさい彼の二人の娘、クリスティアンに病的に付きまとうガキ、懇ろになるチンパンジーを飼っているワケの分からない女、慇懃無礼な各界VIPの面々など、出てくるのはどれもロクでもない奴だ。
そして“分かる者だけ分かれば良い”という現代美術の胡散臭さも示される。全編を覆う不快な雑音と、取って付けたようなハイ・ブロウ(?)な音楽が、作者の“自信過剰だが、実は底が浅い”という軽量級ぶりを強調している。
リューベン・オストルンドの演出は冗長で、ヤマもオチもメリハリもなく、ひたすら退屈だ。主演のクレス・バングをはじめ、エリザベス・モスやドミニク・ウェストといった顔ぶれは馴染みが無いが、見終わった後は良い印象も無い。とっとと忘れてしまいたい映画である。