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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ゴスフォード・パーク」

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 (原題:GOSFORD PARK)2001年作品。アカデミー脚本賞を受賞したロバート・アルトマン監督作で、1930年代のイギリス上流階級人士の生態を、使用人たちの視点で描いた集団劇である。結論から言えば、アルトマン作品としては演出のテンポもラストのオチも弱く、特筆するほどの出来ではない。少なくとも「ナッシュビル」(75年)や「ザ・プレイヤー」(92年)あたりと比べれば見劣りがする。

 その日、郊外に建つカントリー・ハウス“ゴスフォード・パーク”には、週末のハンティング・パーティが開かれようとしており、次々と人が集まってきた。ホスト役は屋敷の主であるマッコードル卿とシルヴィア夫人。お客は俳優や映画プロデューサー、伯爵夫人ら貴族の面々など、かなり物々しい。バックヤードでは召使たちが入り乱れ、目の回るような活況を呈していた。



 ところがその晩、殺人事件が発生。被害者はマッコードル卿で、容疑者は、その時パークにいた人間すべてだった。なぜなら卿は、ほとんどの人間と関わりを持っていたのだった。経済的・血縁的な動機が誰にでもあり、警察の捜査は難航する。

 米国中西部出身のアルトマンがどうしてこういうネタを扱ったのかよく分からないが、アメリカで評価されたのは、アカデミー会員の伝統的な“イギリス・コンプレックス”のためだと邪推する。舞台は英国で、マギー・スミス、クリスティン・スコット=トーマス、ヘレン・ミレン、エミリー・ワトソン、ジェームズ・ウィルビィ、アラン・ベイツといった豪華なキャストのほとんどがイギリス人。時代に翻弄される上流階級の実相を描き、加えて英国貴族の優雅な所作とそれに対する皮肉を垢抜けたタッチで追っているものだから、基本的に田舎者のアメリカ人はそれだけで感服してしまうのだろう(笑)。

 個人的にあまり感想はないが、ジェニー・ビーヴァンによる衣装デザインだけは本当に見事だった。特に、登場人物たちが狩りに出かける際のツイードのアンサンブルは素晴らしい。鑑賞したときは思わず茶のツイードの上着を購入したくなった私である。パトリック・ドイルによる音楽も申し分ない。

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