86年ATG作品。横浜放送映画専門学院(現:日本映画大学)で今村昌平に師事した金秀吉の監督第一作。かなり真面目で正攻法な作りであり、公開当時は高く評価された。しかしながら、ウェルメイドに徹してはいるものの作者の才気というものは殊更感じられない。金監督は今では一線を退いているのも、それと無関係ではないだろう。
東北の小さな町。高校3年生の茂と真二は幼い頃からいつも一緒だった。茂は絵を描くことが好きで、密かに美大に進学したいと考えていた。真二には父はおらず、家業の自転車屋の手伝いや新聞配達などで母親のハツ子を助けしていたが、実は詩作が趣味で、たびたび新聞にも投稿していた。
ある日、茂は真二から中学時代に同級生だった瞳が好きだったと打ち明けられる。そこで茂は瞳を呼び出して真二と仲良くするように頼み込むが、本当は瞳が好きなのは茂の方だった。取りあえず真二と付き合いだす瞳だったが、やがて茂と懇ろな関係になる。そのことは真二の知るところになり、茂との友情は終わりを告げる。
設定だけならばラブコメにもよくあるパターンだが、これが過疎の地方都市と経済的に恵まれない登場人物たち、そして垢抜けない風貌の主要キャストといった御膳立てになると、話は重苦しいリアリズム方面に振られるしかない。
金秀吉の演出は堅実で、一本気な少年期のこだわりが悲劇につながる過程を真っ直ぐに描く。しかし、映画として面白いかと問われれば、そうではないと答えざるを得ない。とにかくドラマツルギーが直線的で、余裕がないのだ。
これがたとえば、茂の描く絵が何かのメタファーになっているとか、絵のモデルになる女子生徒を加えての四角関係に発展するとか、あるいは主人公たちの親に何かとてもイレギュラーなことが降りかかるとか、そういう興趣を喚起しそうな仕掛けは一切ない。この剛直なスタンスは役者の動かし方やカメラワークにも共通しており、教科書的で手堅いのだが観ていてあまり楽しくない。
主演の石橋保と児玉玄、洞口依子は好演。深水三章や萩尾みどりなどの脇を固めるベテランも悪くない。だが、演出側の頑なな姿勢は、それらをスポイルしているように思う。ただ興味深かったのが、真二たちの同級生に扮する出川哲朗。今の彼からは信じられないほどの抑えた演技だ。そういえば出川も金監督と同じ映画学校の出身。基本は出来ているのだから、再び映画の仕事をオファーしても面白いかもしれない。
東北の小さな町。高校3年生の茂と真二は幼い頃からいつも一緒だった。茂は絵を描くことが好きで、密かに美大に進学したいと考えていた。真二には父はおらず、家業の自転車屋の手伝いや新聞配達などで母親のハツ子を助けしていたが、実は詩作が趣味で、たびたび新聞にも投稿していた。
ある日、茂は真二から中学時代に同級生だった瞳が好きだったと打ち明けられる。そこで茂は瞳を呼び出して真二と仲良くするように頼み込むが、本当は瞳が好きなのは茂の方だった。取りあえず真二と付き合いだす瞳だったが、やがて茂と懇ろな関係になる。そのことは真二の知るところになり、茂との友情は終わりを告げる。
設定だけならばラブコメにもよくあるパターンだが、これが過疎の地方都市と経済的に恵まれない登場人物たち、そして垢抜けない風貌の主要キャストといった御膳立てになると、話は重苦しいリアリズム方面に振られるしかない。
金秀吉の演出は堅実で、一本気な少年期のこだわりが悲劇につながる過程を真っ直ぐに描く。しかし、映画として面白いかと問われれば、そうではないと答えざるを得ない。とにかくドラマツルギーが直線的で、余裕がないのだ。
これがたとえば、茂の描く絵が何かのメタファーになっているとか、絵のモデルになる女子生徒を加えての四角関係に発展するとか、あるいは主人公たちの親に何かとてもイレギュラーなことが降りかかるとか、そういう興趣を喚起しそうな仕掛けは一切ない。この剛直なスタンスは役者の動かし方やカメラワークにも共通しており、教科書的で手堅いのだが観ていてあまり楽しくない。
主演の石橋保と児玉玄、洞口依子は好演。深水三章や萩尾みどりなどの脇を固めるベテランも悪くない。だが、演出側の頑なな姿勢は、それらをスポイルしているように思う。ただ興味深かったのが、真二たちの同級生に扮する出川哲朗。今の彼からは信じられないほどの抑えた演技だ。そういえば出川も金監督と同じ映画学校の出身。基本は出来ているのだから、再び映画の仕事をオファーしても面白いかもしれない。