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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「いとこのビニー」

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 (原題:MY COUSIN VINNY )92年作品。舞台はアラバマ州の片田舎。ひょんなことから殺人犯と間違えられて逮捕されてしまった大学生ビル(ラルフ・マッチオ)とその友人。あわや電気椅子送りの大ピンチにふと思いだしたのは、ニューヨークで弁護士をしているいとこのビニー(ジョー・ペシ)。ところが、ケバい恋人と一緒にボロ車やって来た彼は、6年かかって司法試験に合格したばかりで、法廷に立つのもはじめてという頼りのなさ。おまけに口の悪さと態度のデカさで、法廷侮辱罪で留置所送りになってしまう。監督は「ナンズ・オン・ザ・ラン」(90年)などのジョナサン・リン。



 はっきり言って、別にどうということのない法廷コメディである。ラストは予想通りになるのだが、そこに至るプロットが甘い。検察側の証人を“事件をよく見ていなかった”の一点ばりで論破していくのは芸がないし、クライマックスにビニーの恋人がいきなり大活躍するのも、伏線の張り方が弱く、納得できない。全体的に演出のテンポがのろく、笑えるはずのギャグもすべてハズしっぱなしである。

 ま、取柄といえば、南部の閉鎖的な風土をコケにしまくっているあたりか。地元の警察や裁判所の人間たちと、ブルックリン育ちのビニーとのカルチャー・ギャップは、面白いといえば面白い。南部人がビニーたちを“ヤンキー”とののしる場面があるが、WASPに対する蔑称であった“ヤンキー”という言葉を、ニューヨークに住んでいるという理由だけで、イタリア系のビニーに対して使ってしまう、この屈折した南部人の性格がよくあらわされている。あと、変わった公選弁護人が出てくるシーンには笑った。

 さて、可もなく不可もないこの映画をなぜ観る気になったかというと、ビニーの恋人を演じるマリサ・トメイがその年のアカデミー賞の助演女優賞を獲得しているからである。当時の彼女は確かに可愛いし、色っぽいし、独特の動作がキュートである。でも、これで同年ノミネートされていたヴァネッサ・レッドグレーブとかジュディ・デイヴィスなんかの大物をおさえてオスカーを獲得するようなタマかというと、ちょっと疑問だ。候補で唯一のアメリカ人だったからなのか?

 それでも本国では好評だったようで、パート2の製作も予定されたとの報道もあったが(エディー・マーフィーの出演も取り沙汰されていたとか)、実現はしていないようだ。

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