(原題:THE PROMISE )重い歴史的事実を、恋愛沙汰を交えた大河ドラマの中で語っており、幅広くアピール出来る内容になっている。まあ、観る者によっては“こういうメロドラマ仕立てではなく、ハードかつシビアに向き合うべきだ”という感想を抱くのかもしれないが、映画がエンタテインメントである限り、普遍性を持った娯楽作としてアプローチするのは正解だ。
20世紀初頭。オスマン・トルコの山奥にある村で暮らすアルメニア人青年のミカエルは、医学を学ぶために首都コンスタンティノープルの医大に入りたいと思っていた。婚約先からの結納金を学費にして、ようやく希望が叶うことになる。そして彼は、フランス帰りのアルメニア人女性アナと出会い、惹かれるものを感じる。だがアナには、クリスというアメリカ人ジャーナリストの恋人がいた。
やがて第一次世界大戦が始まり、オスマン帝国はアルメニア人を弾圧するようになる。ミカエルも強制労働所に送られてしまうが、何とか脱走に成功。苦難の末に故郷に戻るが、そこでトルコ軍によるアルメニア人の虐殺を目撃する。生き残った人々と共にモーセ山に立て籠もるミカエルだが、トルコ軍は執拗に追ってくる。一方、クリスはトルコの蛮行を世界に知らせようとするが、スパイ容疑をかけられ逮捕されてしまう。果たして彼らの運命は・・・・という話だ。
ミカエルとアナ、そしてクリスの三角関係を軸にドラマは展開するが、御都合主義的なモチーフも散見される。主人公達3人は騒然とした世相の中にあって“偶然に”再会したりするし、クリスが“偶然に”フランス軍に渡りを付けるあたりも強引だ。
しかし、それで良いのだと思う。いかに御膳立てが都合が良かろうと、彼らは真剣だ。しかも、背景にはアルメニア人の迫害という大きな事件が存在している。オスマン帝国の承継者である現在のトルコは、この事実を認めていないらしい。しかし、150万人とも言われる犠牲者数は把握出来ないのかもしれないが、相当な犠牲者が出たことは確かだろう。この理不尽な歴史の事実に翻弄される主人公達には、大いに感情移入出来る。
テリー・ジョージの演出は往年の歴史大作映画を思わせるほどに堂々としており、リズムの乱れは無い。オスカー・アイザック、シャルロット・ル・ボン、クリスチャン・ベイルといったキャストは達者だし、ジェームズ・クロムウェルやジャン・レノも顔を出しているのは嬉しい。ガブリエル・ヤレドの音楽も万全だ。
なお、トルコではロケが不可能なので主にスペインで撮影されたらしい。だが、ハビエル・アギーレサロベのカメラによる映像は、そのマイナス面を感じさせないほど良く出来ていた。