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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「さらば青春の光」

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 (原題:Quadrophenia)79年イギリス作品。若造だった頃にリアルタイムで観ているが、大した出来ではないと思った。たぶん、今見直しても評価は変わらないだろう。ただ、思慮の足りない若者がいかにも陥りそうなディレンマと破局の一典型として“資料的な”意義はあり、何より時代背景の60年代の風俗の再現は、この映画の存在価値を確実なものにしている。

 64年ロンドン。若者ジミーは退屈な仕事にも両親との無味乾燥な関係にも嫌気がさし、モッズ仲間のデイヴやチャーキーらとスクーターでの暴走や敵対するロッカーズたちとのケンカに明け暮れていた。彼が憧れていたのは、モッズのカリスマ的存在であるエース・フェイスだった。ニヒルで沈着冷静、それでいて面倒見が良いエースのような存在になりたいと思っていたジミーだが、拡大するロッカーズとの抗争は警察の介入を招き、立場が危うくなる。



 一方でジミーは自室にあった薬物を母親に見つかって家を追い出され、仕事もクビになる。付き合っていた彼女はデイヴに寝取られ、事故によって愛用のスクーターも失う有様。そんな彼に追い打ちをかけたのが、あれだけカッコ良かったエースが、実はホテルのベルボーイで、客にヘイコラしているのを目撃したことだ。絶望したジミーは、捨て鉢な行動に出る。

 この主人公には全く感情移入できない。自堕落な生活をやめられず、勝手に不幸を引き寄せているだけだ。しかも、頼りにしていたエースが地道に働いているのを見て、独りよがり的に世の中全体を悲観してしまう。エースみたいな若造がそう簡単に社会的成功を手にできるはずもなく、それどころか就職難のイギリスで堅気の仕事にありついているだけでも、ジミーよりは数段マシな生活を送っているのは言うまでもない。

 映画はこの甘ったれた主人公に対する批判精神さえ持ち合わせず、ジミーの行動を思い入れたっぷりに追うだけ。ダメ人間のケースモデルとしての価値はあるかもしれないが、映画的興趣が伴わないのであれば、それは評価するに値しない。

 ただし、この頃の若者文化の紹介という点では、興味を惹かれる。モッズやロッカーズのファッションは全然垢抜けていないが、こういうスタイルが隆盛を極めたという事実の提示には意味があると思う。フランク・ロッダムの演出は平板。主役のフィル・ダニエルズをはじめ、(エースに扮したスティングを除いて)キャスト陣は概ねパッとしない。

 なお、本作はザ・フーのアルバム「四重人格」を元にしている。そのため音楽だけはノリが良くて盛り上がる。話によると、ザ・フーのギタリストで本作の脚本にも参加したピート・タウンゼントは、主役は元セックス・ピストルズのジョン・ライドンに演じて欲しかったと後年語っていたらしい。

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