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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「キングスマン:ゴールデン・サークル」

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 (原題:KINGSMAN:THE GOLDEN CIRCLE)前作(2014年)に比べると大幅に落ちる出来映え。設定や脚本を練り上げないまま、見切り発車的に製作された感が強い。やはりヒット映画の続編の作り方は難しいのだろう。

 突如現れた謎の敵“ゴールデン・サークル”の攻撃により、スパイ機関“キングスマン”の拠点が、ロンドンのサヴィル・ロウにある本部を含めすべて壊滅してしまう。生き残ったのは前回の主人公エグジーと、教官兼メカ担当のマーリンの2人だけ。彼らはアメリカにある似たような組織“ステイツマン”の存在を知り、協力を得るためケンタッキーまで赴く。

 バーボンの製造工場の内部に本拠地を構える“ステイツマン”は、“キングスマン”とは大違いのアメリカンなチームで、エグジー達とは折り合わない。一方“ゴールデン・サークル”の女ボスのポピーは麻薬取引に関して世界を震撼させるような計画を企て、米大統領を脅迫する。果たしてエグジーとマーリンは“ステイツマン”の面々と協力して事態を打開できるのだろうか・・・・という話だ。

 長い歴史を誇っていたはずの“キングスマン”が、呆気なくほぼ全滅してしまうのは違和感がある。しかも、前作での扱いが大きかったキャラクター達も一緒に消滅だ。これ以外でも、本作では無駄に多く登場人物が死んでしまう。かと思えば、死んで当然と思われる者達はしっかりと生き残る。果ては前回で退場したはずの“あの人”までが性懲りも無く現れるに及び、早々に観る気が失せてきた。

 ハデな見せ場は多いが、前作のような卓越したアイデアは見られない。舞台こそワールドワイドになったが、007シリーズの亜流のような印象を受けてしまう。“ステイツマン”の描写はもっとコテコテに盛り上がって然るべきだが、どうも薄味だ。西部劇風の格好をすればサマになるとでも思ったのか。それではダメだ。

 “ゴールデン・サークル”の悪巧みは、ひょっとすると(ある意味では)世界平和に貢献するのかもしれない。事実、劇中にもそういう意見を表明する者は存在するのだが、主人公達はヒューマニズム(?)の姿勢に則って頭から否定する。これはあまりにも安易で、そのことが終盤の後味の悪さに繋がっている。

 売り物のグロ描写には今回はユーモアが感じられず、ただ残酷なだけだ。特に“人間ミンチ”にはドン引き。関係ないが、私はジェームズ・グリッケンハウス監督の「エクスタミネーター」(80年)に似たようなシーンがあったことを思い出した。あの映画はシリアスなタッチでエグい場面にもカタルシスはあったが、本作はただの悪趣味としか思えない。

 マシュー・ヴォーンの演出はメリハリが無く、これまで順調だったキャリアも停滞しそうだ。タロン・エガートンをはじめジュリアン・ムーア、マーク・ストロング、ハル・ベリーといった面々には覇気が感じられない。チャニング・テイタムやジェフ・ブリッジスは別に出てこなくてもいいような役柄だし、エルトン・ジョンの登場も特にインパクトは無い。一応ヒロイン役のハンナ・アルストロムは、ハッキリ言ってブサイクだ(笑)。何やらまた続編があるような終わり方だが、この調子ならばあまり期待は持てないだろう。

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