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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アメリカン・ビューティー」

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 (原題:AMERICAN BEAUTY )99年作品。とても面白く観た。これに似た映画といえば森田芳光監督の「家族ゲーム」(83年)かもしれない。しかし、あの映画にあった“しょせんテメエら皆ボンクラじゃん”というニヒリスティクな達観はなく、作り手の視線のレベルが登場人物と同等である点が広い層にアピールする理由だと思う。

 広告会社に勤める中年男レスターは、郊外の新興住宅地の一戸建てに妻キャロリンと高校生の娘ジェーンの3人で暮らしているが、最近は妻とは倦怠期で反抗期の娘とは話も出来ず、鬱屈した日々を送っている。さらに会社からは早期退職を打診され、ストレスが溜まるばかりだ。ある日、隣に元海兵大佐のフィッツの一家が引っ越してくる。彼の息子リッキーは根の暗そうな若造だが、何とジェーンはそんな彼に興味を持ち、交際を始めてしまう。



 一方、キャロリンは仕事上で知り合った不動産業者のバディと堂々と浮気。レスターは会社に辞表を提出して多額の退職金を入手。そしてハンバーガー店でバイトを始めたかと思うと、あろうことかジェーンの友人であるチアガールのアンジェラに惚れてしまう。家族がそれぞれ勝手に暴走を始めた末に、事態は取り返しの付かない様相を呈してくる。

 冒頭に“広い層にアピール出来る”と書いたが、個々の描写は昨今のアメリカ映画の水準を大きく逸脱するほど辛辣だ(監督がイギリス人のサム・メンデスってのもあるだろうが)。ブラックユーモアの扱い方にも容赦ない冷酷さ(?)が光る。



 個々に重要な役割を担う各キャラクターの巧妙な配置と、それに応えるキャストの目を見張る仕事ぶり。そして卓越した画面配置と効果的な映像処理には感服するばかりだ。公開当時は“アメリカの中産家庭の危機を描いた”と言われていたが、このテーマは万国に共通するものだと思う。

 主演のケヴィン・スペイシーは絶好調。悩んだ挙げ句に常軌を逸していくオッサンを楽しそうに演じている。アネット・ベニングやピーター・ギャラガー、クリス・クーパーといった共演陣は濃くて良い。ソーラ・バーチとミーナ・スヴァーリのコギャル2人も頑張っている。

 トーマス・ニューマンの流麗な音楽。コンラッド・L・ホールのカメラによる清澄な画面(特に“風に舞うポリ袋”の美しさは特筆もの)。鑑賞後の満足感は高い。第72回アカデミー賞作品賞受賞。前年の「恋におちたシェイクスピア」に続き、この頃のアカデミー賞は良い選択をしたものだ。

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