(原題:Legend)85年作品(日本公開は87年)。映画の内容よりも、作品を取り巻く裏の状況の方が面白い。日本での封切りが遅れたのも、それと無関係ではないのかも。とにかく“珍作”であることは確かだろう。
大古の世界。王女リリーは美しい2頭のユニコーンに魅せられ、思わずその角に触ってしまう。だが、それはタブーとされている行為だった。たちまち1頭のユニコーンが倒れ、世界は呪いをかけられてしまう。そこに闇の魔王が出現し、リリーを掠う。彼女と懇意にしていた野性の青年ジャックは、妖精仲間と共にリリーの救出に乗り出す。
はっきり言って、私はファンタジーものが嫌いである。どこの世界とも知れない舞台背景で、文字通り浮き世離れしたキャラクターが動き回るという、全然ピンと来ない御膳立て。しかも、話が絵空事であることを“免罪符”にするかのごとく、脚本がいい加減なケースも珍しくはない。本作も、やたら(見た目は)賑やかな面子が出てくるが、ストーリーは単調で盛り上がりに欠ける。終盤の処理など、御都合主義もいいところだ。当時脂がのっていたはずのリドリー・スコットの演出とも思えない。
主演は何とトム・クルーズで、その頃は売り出し中であったのは確かだが、全然似合わない役柄だ。ただし、リリー役のミア・サラは魅力的。魔王に扮するティム・カリーも怪演だ。ロブ・ボーティンによる特殊メイクの見事さは言うまでもない。
さて、この映画には2つのヴァージョンがある。日本でも公開された“国際版”と、本国仕様の“アメリカ公開版”である。何が違うかといえば、前者の音楽担当がジェリー・ゴールドスミス、後者がなぜか(ゴールドスミスに内緒で)タンジェリン・ドリームのサウンドが付けられていたというのだ。以後、スコットとゴールドスミスの仲は険悪となり、泥仕合が続いたらしい。スコットは映像面では突出した才能を持っていたが、音楽に関しては無頓着であったことが窺える。なお、日本公開版は1時間半程度だったが、現在は2時間弱の完全版がDVD化されている(私は見ていないが ^^;)。